第12回口頭弁論傍聴記


うちのぬこは近所をパトロールするという仕事があるので家庭では働きません。
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2012年4月25日、この日も朝もはようから行って参りましたよ、京都裁判所。
今回も無抽選で法定内に入ると、何時もより席が空いていた。被告側のほうは3人ほどいたようだが、他は学校支援者と思われる。
今回の裁判は先にいっとくと、裁判官の人事異動とこの間に出された双方の主張の争点整理のため仕切り直しとなる裁判となった。
本来なら被告尋問が始まる前に争点整理と立証計画を行うはずだったのだが、裁判長が変わる時期と被告側が「主犯ではない、事件への関与度合いがない」とする尋問された被告人との兼ね合いもあり、ここで一端仕切り直しとなった模様だ。

裁判がはじまると、新しい裁判長から構成が変わった事と、最初に学校弁護団からの冒頭陳述がある事が述べられた。学校弁護団としては、新しい裁判長となり、また裁判の仕切り直しで自らの主張を改めて整理し立証するのかの冒頭陳述となった。


この原告側冒頭陳述では、この朝鮮学校嫌がらせ事件がどのような事件であったかを的確に指摘し、民族教育の重要性及び本件各街宣で受けた損害の本質及び、この事件はレイシズムによる差別事件であると述べ、その上で証人尋問において何を立証しようとするものかが述べられた。
この原告弁護団の仕切り直しの冒頭陳述は、事件のあらまし及び民族教育の重要性を訴えた原告側第一書面と、この事件は人種差別事件であると訴えた第二書面を改めてわかりやすく訴えたものであり、原告弁護団の主張はいささかもぶれていない事を証明したものとなっている。
なお、この原告弁護団冒頭陳述は今後の人証計画において重要であると思われ、次回に全文を掲載予定。



それに対して被告側代理人より、書面はなく口頭で冒頭陳述が述べられた。(概略)

「原告の主張は被告らの街宣が差別意識に基づき民族教育を阻害されているものと受け止めた。これに対して被告の主張は、被告らの街宣活動の本質部分は、正当な政治的行為である。これは明らかになっているが、朝鮮学校が長期にわたり公園を不法占拠し、その違法性故に元校長が刑事処罰を受けた事は事実である。確かに被告らの街宣活動はこれを糾すとものに留まらないものがあったと思う。思わず顔をしかめる場面を多々ある。しかし、原告側がヘイトスピーチ、民族差別だとレッテルを貼って糾弾しているが、被告らが行っているのは朝鮮学校を支配し、朝鮮総連という社会の中にある権力、これが行っている不法行為だというとこにあった。原告代理人は本件以外の事を引き合いにだして民族差別だと言っていたが、被告らが見ている社会問題の一つに北朝鮮と一体となって活動している総連がなんら制約を受けないままに大きな利害問題、人権問題を日本社会の中にはぐくんで作出してきたという事にある。総連における考え方は政治問題をすべて民族差別だというレッテルを貼って封殺してきた。という思いが被告ら、被告らのシンパシーをもったものに深くある。差別によって封殺されてきた政治活動の自由、或いは表現活動の自由、本件はその点が問題にされている。あと、原告が損害の核心部分にあるといっている、民族教育の人格権というが、その教育内容は日本国内で行われている教育であり自治体からも補助金を受けているにもかかわらず、民族教育の実態というものがなかなか国民の目に明らかになっていない。それは民族教育ではなく金日成を神格化し絶対的忠誠を要請する思想的洗脳教育だという批判もある。それを問題とする韓国の脱北者団体が建白書、或いは民団においても朝鮮学校で行われている教育の問題があると意見書が出ている。そういった問題を抱えている本件学校の民族教育、それは果たして我が国における公、或いは公共の利益に照らしてどうなのか、原告はヘイトスピーチという概念を持ちだし差別撤廃条約を持ち出しているが、しかしヘイトスピーチというのが民族の歴史、宗教を問題にするとするならば、被告らの見た朝鮮学校の民族教育というものはヘイトスピーチ教育だと、ととられても仕方ない。少なくとも朝鮮学校はその教育内容を地域住民にきちんと知らせる努力を怠っていたと言わざる得ません。恐らくその事が新聞報道であったように本件学校が移転を余儀なくされたという事に関係しているかもしれない。最後にヘイトスピーチをめぐるアメリカの議論の中でヘイトスピーチというレッテル貼りに対する警戒がある。これらを今後、証人尋問と書面で明らかにしていきたい」


この被告代理人の言い分は当たり前の話ではあるが、在特会をはじめとする被告らの言い分である。
まず、代理人も認めるように被告らの街宣活動で「顔をしかめるようなものがあった」という事を述べているが、これは刑事裁判において侮蔑の事実認定が確定し、抗しきれないものを認め、その上で総連と朝鮮学校を一体化し悪魔化しようとする戦術だと思われる。
恐らく、被告側証人においては総連への抗議活動である事が強調され、原告側証人に向けては学校の教育内容と総連との関係を突いてくるものと予想される。
まず、最初に言っておくが、筆者は総連については二つの側面をもつ組織という認識がある。一つは朝鮮民主主義共和国の日本における代理機関。もう一つは在日公民の権益擁護。その上で評価は様々だが、少なくとも日本における民族教育を担ってきた組織である事は間違いない。
しかし、その事と本件は結びつけられるものではない。本件は他の何処でもない、被告らが朝鮮学校をターゲットして引き起こした事件であるからだ。被告らは決して朝鮮総連でこの事件をおこしたのではない。総連つどつどは後付けに過ぎないのは明らかではないか。
その上で、筆者は思うのだが、本件において繰り出されたヘイトスピーチにいくつ総連関係のものがあったろう。少なくとも原告第一書面で取り上げられた被告らのヘイトスピーチは学校、朝鮮民族に向けられたものがほとんどといっていい。これを総連にもっていこうとするのは無理があると思われる。さらに被告らがその教育内容をヘイトスピーチだというが、被告らは実際に朝鮮学校の今現在の教科書を見た事あるのか?恐らくないだろ。また、地域住民への周知っていったい何なのだ?他の学校でそのような事をしているのか?なんで朝鮮学校だけがそれをしなければならないのだ?
それこそ、傲慢なまでのヘイトであると筆者は考える。
しかしだ、その上で、いま朝鮮学校ほど、地域との交流をもとうと痛々しいまでの努力する学校を他に知らない。
原告側からは今後それを証明する資料書面が出されると予想される。
あと、被告代理人表現の自由からヘイトスピーチとは何かに突破口を見いだそうとしているとこは個人的に少し興味深かった。


被告代理人よりの冒頭陳述が終わり、裁判長より、幾つかの書面と証拠の確認がおこなわれ、この後、裁判長より事件現場、つまり学校と学校周辺、デモコースの見分を行いという意向が述べられ、6月20日にその日が設定された。


そして今後の人証のスケジュールの確認に入ったとこを少し細かく。
裁判長より、原告被告双方から決まっているものとして、被告側、西村斉氏、中谷振一郎氏、八木氏、西村修平氏、川東氏の5人。外れているものとして、荒巻氏、高田氏の名前が出て、被告側より、荒巻氏は申請しない項が述べられた。理由として他被告で事足りるとしたところ、原告側より、4月20日に荒巻氏が学校建設予定地に行っている事が述べられ尋問の必要を述べたところ、裁判長より「そうすると呼ばない訳にはいかないかも」との発言。被告代理人絶句。
次に裁判長より「高田さんは本件の活動に直接参加していない」と被告側に問うたところ、被告代理人より「高田さんというのは存じ上げていない」との返答。かまわず裁判長が「これ代表者だからですよね」。との問いに被告代理人「桜井さんですね。ここは八木さんがいるので充分」との会話があり、原告側より、桜井氏は本件事件を扇動した組織性があり、桜井こと高田氏のカリスマが組織をなしており八木氏とは違う。使用者として権限もあると述べるも被告側はなおも八木氏で充分とした。また被告側より原告側証人について検討するので留保したい項が述べられた。
続いて裁判長より予定して来年3月に終結予定であると述べられるがそこにこだわっていない事も添えられた。
結局、荒巻氏、自称桜井氏に関しては原告側より上申書を出して6月20日に協議となる。

決定として
被告人尋問予定
7月11日(水)午後2時  西村斉氏、中谷振一郎氏
9月26日(水)午後2時  八木氏、川東氏(相談の上)

以上。約1時間に渡る口頭弁論であった。

今回の口頭弁論における原告弁護団の決意性を改めて感じさせる一方で、被告側が自称桜井氏をともかく尋問に応じさせないとした姿勢が印象深かった。