京都・徳島事件刑事裁判地裁判決を終えて

え〜、今回は判決という事で傍聴席24席をめぐって競争率が約3倍となり、当たり前のようにはずれました。もう悔し涙を流しながら地をたたきましたよ。でも、鴨川べりのカップルに石は投げなかった。それは褒めてほしい。
そういう訳で以下は傍聴した方からの話と筆者の感想を記します。



まず、裁判のニュースとして以下が詳しく乗っているので記載。

朝鮮学校に大音量で有罪判決」NHKニュース
http://www.nhk.or.jp/kyoto/lnews/2015245411.html
京都市にある民族学校に向けて大音量で街宣活動を行ったとして、威力業務妨害などの罪に問われている団体の幹部4人に、京都地方裁判所は、21日、執行猶予の付いた懲役1年から2年の有罪判決を言い渡しました。
在日朝鮮人に対する抗議活動を続けている「在日特権を許さない市民の会」の幹部の西村斉被告(42)ら4人は、おととし12月、京都市南区にある京都朝鮮第一初級学校に向けて大音量で街宣活動を行ったなどとして、威力業務妨害などの罪に問われています。
21日の判決で、京都地方裁判所の笹野明義裁判長は「4人の行動は正当な政治的表現の限度を逸脱した違法なもので、多数の児童がいることをわかっていながら拡声器を使って侮辱的な発言を繰り返した犯行は悪質だ」と指摘しました。
その上で、「被告らが『違法と判断されれば活動手法を改める』と述べているのは、刑を軽くする理由になる」と述べ、4人に対して、懲役1年から2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。
判決について、「在日特権を許さない市民の会」の幹部の西村斉被告は「今回の原因をつくったの
は、朝鮮学校側だということに触れられていない判決だった。控訴も検討している」と話していました。
一方、京都朝鮮第一初級学校は、「事件で精神的にも物質的にも多大な苦痛と不利益を被った。刑の軽さには不満も覚えるが、彼らが逮捕・起訴され司法の場で刑事被告人として裁かれたことは、社会的に一定程度、評価される」というコメントを出しました。」
上記とおりに判決は求刑どおり。
西村斉   懲役2年 執行猶予4年。
荒巻靖彦  懲役1年6カ月 執行猶予4年。
川東大了  懲役1年6カ月 執行猶予4年。
中谷辰一郎  懲役1年 執行猶予4年。
(地裁判決だが、犯罪事実が一応確定したと判断、実名表記とします)


上記ニュース以外に、傍聴された方の話によると判決文には「学校側への侮辱は明白」であり、徳島においては「政治性は認められず」「警察の制止がなくとも関係なく犯罪である」「悪質であり反省がない」「西村斉は計画を立案、リーダで主犯」「荒巻靖彦、川東大了はともに重要な役割をえんじた」「中谷辰一郎は朝礼台を運び中心的な役割をした」などの文言があったという事だ。
さらに最後「次は執行猶予がつかない」とはっきりと述べられていたという。


筆者の感想として、刑事裁判当初よりこの裁判にはそんなに期待できない事を述べていた。その理由として、起訴する検察に「差別に対する認識」が薄く、この両事件で最もひどい暴力であった人間に対する尊厳を踏みにじる行為に対処しようとするものがなかったという事だ。先のエントリーでもいった事だがもう一度表記する。
「本件裁判が始まる前に朝鮮学校元校長を罰金刑といえども略式起訴し、被告らのヘイトスピーチの破壊的暴力性を認識できず、現行法において適用できる名誉棄損を侮辱罪に落とし、朝鮮学校側に被害の根深さに対するアプローチも程々にし、在特会会長桜井誠(自称)、主権回復を目指す会代表西村修平に対する追及も区切り、事件の発端となるメールを差し出したヘイト団体である在特会にシンパシーをもつ近隣住民への言及も、実際の公園使用の苦情に対する調査もいやがらせのような苦情にさらされた公園管理課の証言で適当にすませ予定調和で事件処理をしようとする検察である。再び言うが、こんなもんである」。
そして裁判官はその検察要求に沿い、判例にしたがい判決を下したという事であった。主文において「被告らが『違法と判断されれば活動手法を改める』と述べているのは、刑を軽くする理由になる」とどうにか執行猶予がつく着地点をみつけたというところか。
「お優しいですね」と声をかけたくなる判決である。現行法ではこんなものか。
ただ、主文において被告らの粗暴事実を認め、悪質であり反省がないものとしており、それが司法において有罪とはっきり認定されたのは大きな出来事だと言える。これは被告らの活動が犯罪であるとはっきりと言っているのである。さらに、被告らは「次、執行猶予はつかない」と主文に加えられた文言の重みを被告らは知るべきである。


次に当事者として事件にまきこまれた、朝鮮学校側の声明が頂けたので全文記載する。

「京都朝鮮第一初級学校「襲撃」事件に関する刑事裁判判決について

去る2009年12月4日など、刑事被告人・西村斉他3名をはじめとした在特会メンバーらによって引き起こされた京都朝鮮第一初級学校への「襲撃」事件によって、同学校と学校法人京都朝鮮学園、及び同校の児童・園児とその保護者などの学校関係者は、精神的にも物質的にも多大な苦痛と不利益を被った。
彼らのような人種差別集団、嫌がらせグループが、子どもたちと保護者を混乱と不安に陥れたことについて、我々学校関係者は、今もっても決してこれを許すことが出来ない。
事件発生時、彼らの常軌を逸した異常な言動がこのまま放置されるのではないかと不安に感じた。しかし、その刑罰の軽重、及び罪状に見られるような裁かれ方には少なからぬ不満を覚えるが、仮にそれを別にするならば、彼らが逮捕・起訴され司法の場において刑事被告人として裁かれたことには、一定の社会的評価が付与されるものとも考える。
今回の判決が一罰百戒となることによって、又彼らを被告として現在進行中の民事裁判の結果によって、今後、このような忌まわしい民族差別、外国人いじめが起こらないよう、又人種差別撤廃条約を初めとする各種国際人権法が遵守されて、全ての子どもたちが安心して健やかに育って行ける社会となるよう、心から願うばかりである。
我々学校関係者は、その様な願いを一つの礎石として、多くの良心的な日本市民の支援・賛同に鼓舞されながら、民族教育の発展になお一層努めて行きたい。
                               2011年4月21日
                             学校法人京都朝鮮学園
                             京都朝鮮第一初級学校 」


そして、裁判終了後に同じく事件に巻き込まれた被害者であるTさんの感想が聞けた。

徳島県職員組合 Tさん。
「今回、裁判長がこちらの主張をとりいれて、在特会の犯罪的行いを認めて頂き、うれしく思います」



最後に、本日刑事事件の地裁判決が出たが、この事件はまだ終わりではない。
刑事事件は終わったかも知れないが、・・いや、首謀者と認定された西村斉氏が上告するのならば、是非してほしい。被告らが無罪主張をするのは、この国の許された自由だ。そして被告らの主張は何一つ認められるものではないと確定してほしい。間違った事実認識と、手順を踏まない間違った行動と、何よりも問題提議と都合のいい言葉で行われた排外暴力をより正しく司法に判定してほしいと願うからだ。この京都・徳島事件において被告らの言い分は何一つとおるものはない。
そして、朝鮮学校側が行う民事裁判はまだまだ続く。事件の事実認定としてこの刑事事件の有罪判決は民事裁判においてもその役割を果たす事になる。



本日のグルメレポート
京都裁判所すぐそこの京料理のお店。古い作りの店のたたずまいがGood。うな重定食おいしゅうございました。