朝鮮学校いやがらせ事件民事被告側第一準備書面

え〜、年度末です。税務署です。確定申告です。俺の金返せという熱いパッションを忍ばせながら税理士に小言を言う季節です。え?違う?なんで?・・・では、暖かい日々が続いていますが、もうすぐ春ですね。だから俺の金返せ。皆様いかがお過ごしでしょうか。・・・うん?まだ何かおかしいな。


さて、裁判記録を入手する事ができ、その記録を整理していたのだが、なんとまあ被告側準備書面出ているじゃないの。京都朝鮮学校いやがらせ事件第三回口頭弁論傍聴記で書いたように、てっきり徳永弁護士が『表現の自由―その公共性ともろさについて」(毛利透著)』を朗読しただけで、これちゃんと書面になっているのかと疑問をもっていたが、なんとA4用紙19頁にわたるものが出ていた。
内容としては、前半部は被告とされた美久氏、ブレノ氏、西村父氏の訴状に対する認否であり、中盤で先の『表現の自由―その公共性ともろさについて」(毛利透著)』となり後半が「民族教育事業」についての反論?となっている。


以下その紹介。
前半部は個人情報を伴う部分があるので概略を簡単に。中盤は前エントリーに載せたので省略。後半はそのままとする。

まず、被告美久氏、ブレノ氏、西村父氏の3者に共通するのは、自分達は「在日特権を許さない市民の会」及び「主権回復を目指す会」の会員ではなく、主導的役割を果たしていないという点だ。
しかしこれはどうだろう。この訴状による事件の時期被告らは朝鮮学校襲撃事件に関連する街宣デモどころか、それ以外の在特会主権回復を目指す会を含む、チーム関西関連活動に積極的に参加していたように思う。弁護団資料にも被告3名の誰がどの集会活動に参加していたかを記載している資料が証拠として上げている。特にブレノ氏に関しては逮捕直前まで動画UPを繰り返していた。そういう意味で主体的と言っていい活動参加であったのではないだろうか。
後はいい訳めいた印象がある。美久氏のとこは「平成22年1月14日被告らの行為について。被告A氏に声をかけられ他の参加者女性と2人で本件自動車に搭乗するよう求められ、乗車すると原稿とマイクを渡され求めに応じこれを数分間読み上げたものである」となっており、自己の責任の矮小化を図るような文言となっている。またブレノ氏に関しても「12月4日は真実を知り事実を撮影するために見物人として現場に「立会」っているだけであり、これは「参加」しているわけではない。そこでのシュピレヒコールに唱和することも自ら演説することも掲げられた旗幟にふれることもビラを配布することもない。被告ブレノ氏の活動は見物人としての立場を頑なに守り目の前の街宣の様子を撮影、主観を交えそのまま動画サイトにアップロードし公開し、一般市民の評価に委ねることである」と中立的であるとの見解を述べているが、学校側弁護団の第7準備書面で示されたように、彼はシンパシーをもってチーム関西に係わっているのは明らかであり、主導的共犯関係は述べられた通りである。そして刑事裁判第3回公判においても、被告らが口を揃えて動画のために活動したと述べているし、その動画取っているのはとりもなおさずこのブレノ氏である。またブレノ氏は同書面において「平成21年4月のNHKJAPANデビュー」で事実歪曲を知り同年5月23日大阪NHK前の街宣活動を撮影しアップロード」が最初の活動と述べているが、この平成21年4月放送の「NHKジャパンデビューアジアの1等国」は台湾の植民地経営の内実を語ったもので、これを歪曲と憤慨したと思われる初活動は自らの立ち位置が実は最初から明確であったと言えるのではないだろうか。

資料「NHK JAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』をめぐって」
http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1960.html


それ以外に情報として、平成22年3月28日の京都河原町付近での学校支援のためのデモに対する別動隊活動は、「主権回復を目指す会」の西村修平氏が勢力を二手に分けて差配した事をブレノ氏は不知としている。
あと、美久氏に2000万、ブレノ氏に3000万の損害賠償金が求められているとあり、調べたが弁護団が新たに請求したという資料もないし、何の事だかわからなかった。

前半部の気がついた概略は以上で、この後の中盤の「表現の自由」(毛利著)は先に紹介しているので省略させてもらう。
次に、これが何故か裁判では省かれていたように思われる被告らの「民族教育事業」に対する反論?である。本来ならこの部分こそ、今後裁判を争う上で被告らの言い分を強調すべきところではないかと思うのだが、何故か飛ばされていた。読んでもそんなに時間はかからないと思うのだが、何故だろう?
以下、原文ママ


第4 被告西村斉氏、川東氏、荒巻氏、中谷氏、桜井氏、西村修平、八木氏の7名は次回の請求原因に対する認否を行い、その主張を明らかにする予定であるが、それに先立ち、今回明らかにした被告西村父氏、美久氏、ブレノ氏の主張と共通する本件の争点に関して以下の通りに主張する。

1 原告及び京都朝鮮第一初級学校の法的位置づけ
原告は自らにつき「教育基本法及び学校教育法に基づいて、私立中高級学校及び初級学校、初級中学校その他の学校等を設置して朝鮮教育一般文化啓蒙事業を行う事を目的とした学校法人である」と主張している。
しかし、原告は教育基本法及び学校教育法に基づくものではなく、私立学校法46条4項及び同6条に基づいて認可された学校法人にすぎない。
そして、原告が設置している朝鮮学校の施設は教育基本法6条12項にいう「法令に定める学校」ではない。その運営及び教育内容については朝鮮総連中央及び金正日をトップとする北朝鮮朝鮮労働党が事実上決定しており、我が国の「公の支配」の下に属するものではない。それゆえに京都朝鮮学校は学校教育法第一条に基づく「学校」でも同条第124条に規定される「専修学校」でもない。朝鮮学校は学校教育に「類する教育」を行うものとして学校教育法134条に規定される「各種学校」であり、その法的位置づけは受験予備校や自動車教習所と同じものである。よって本件各街宣活動でなされた演説ないしシュピレヒコール「朝鮮学校と言いますが、これはただ自分達が学校と言う名前をつけただけであって、我が国の認可を受けた学校ではない」(1月14日)「朝鮮学校は学校ではありません」(3月28日)は事実に基づく表現であり、「日本の文科省の認可を受けていない任意団体に、なぜ我々の税金を払って教科書を無償にする必要があるか」(3月28日)は事実に基づく正当な意見表明であり、原告に対する非難でも中傷でもなく、名誉棄損を構成するものではない。

2 原告による「民族教育事業」の実態について
① 原告が設置する京都朝鮮第一初級学校等で使用されている教科書は、学友書房が朝鮮大学の協力のもとに作成したものを北朝鮮労働党が検閲したものであり、日本の文部科学省が示す学習指導要領に沿った検定教科書ではなく、朝鮮戦争北朝鮮の侵略によるものであることを隠蔽したり、李氏朝鮮の圧政から解放した日本統治を暗黒時代として記するなど歴史の歪曲が著しい。また朝鮮学校における、民族教育については「純粋な民族教育を離れて金日成金正日父子を偶像化する教育のみ重点を置くイデオロギー洗脳場である」と批判されている。
② 周知の事であるが朝鮮学校に関する問題の多くは、その運営と学習内容の不透明さ、言い換えれば「民族教育事業」の不明確に由来している。朝鮮総連による朝鮮学校の予算と人事の事実上の支配、朝鮮総連による不正送金や拉致事件への関与、朝鮮学校長による覚醒剤密輸、金日成金正日父子の独裁を正当化し、礼賛と隷属を強いる教育内容、朝鮮戦争や日本統治に関する歴史の歪曲、朝鮮学校における秘密工作養成等々、朝鮮学校における「民族教育事業」の実態に関し数多くのスキャンダルが公然と語られ、それが事実として受け入れられ社会的懸念が広がっている。
先般、政府は拉致事件北朝鮮軍による砲撃を、朝鮮学校における民族教育の在り方と結び付け、朝鮮学校に通う子女に対する公的補助の手続きを停止した。にもかかわらず、原告や朝鮮総連側から「民族教育事業」の事態について明らかにして社会の懸念を解消しようとする姿勢は見えない。
③ 本件訴訟における原告の「民族教育事業」は責任論と損害論の両面におけるキーワードであるにもかかわらず、訴状及び原告第一準備書面における主張には「民族教育事業」に係わる前途の社会的懸念に対する釈明はなく、その実態は依然として不明確なままだと言わざるえない。現在、原告による「民族教育事業」が困難に直面し途絶の危機にひんしているのは事実であろう。しかし、その主たる原因は被告らによる本件各街宣活動や民族差別ではなく、原告による「民族教育事業」にまつわる不透明さや、それ自身の欠陥にある。現に多くの在日コリアンの保護者は金正日独裁体制の先行きに見切りをつけ、現在朝鮮学校に通う児童の多くは朝鮮総連幹部の子弟であるとの噂がまことしなやかに囁かれている。
被告らは本件訴状を通じて、原告ないし総連による「民族教育事業」に横たわる不透明による社会的懸念を追求し、原告をしてその実態を明らかにしていく所存である。


以上である。正直、この論調は酷い。
まず、朝鮮学校の法的な位置づけとして予備校や自動車教習所として同じ扱いとして印象づけようとしているが、これは社会的な実情を敢えて言わない中傷の部類に入るものではないだろうか。被告らはつい最近の朝鮮学校無償化に絡んだ政府の公的機関が「授業内容と本国の教育課程が日本の学習指導要領におおむね合致していると確認できること」として確認をした事実を知らないのだろうか。さらに朝鮮学校卒業生を受け入れる大学が多数にのぼり、スポーツにおいて全国大会に出場し好成績を収めている事実をどう思っているのだろうか。社会は朝鮮学校を決して予備校や自動車教習所と同列には見ていない。教育機関としての学校として扱われている現状を突きつけられれば終わりではないだろうか。
さらに、総連支配下にあり北朝鮮政府の支配下にあるというが、その証拠を提示できるのだろうか?まさか暴露本一つですり抜けられるとは考えていないだろうか。
また、「礼賛と隷属を強いる教育内容、朝鮮戦争や日本統治に関する歴史の歪曲、朝鮮学校における秘密工作養成等々」というが被告らは朝鮮学校の教科書というのを見た事あるのか?また、その主観的な歴史観が裁判で通用すると思っているのだろうか。史学的裏付けをもってそれを主張できるか甚だ疑問なとこである。さらに秘密工作員養成という件は、もうわかったから証拠を出せとしか言いようがない。そして「現在朝鮮学校に通う児童の多くは朝鮮総連幹部の子弟である」は断じて間違いだと言える。筆者は朝鮮学校に子供を通わせるむしろ総連嫌いの知人を知っている。
もうね、噂だとか社会的懸念とか、サンケイ新聞読者でもそこまで考えている人がどれほどいるの?ぼかした表現ではなくはっきりとした論拠を持ち出さねば、これも中傷と言われても仕方ないのではないだろうか。しかし、さすがにこの書面の理屈の延長線上にある、戦争が起これば朝鮮学校で養成された反日テロリストが日本を破壊すると被告らがアジで叫ぶ事までは言ってないよな。
あと言えるのは、刑事裁判でも思ったが、被告らが叫んだヘイトスピーチをより分け分断して、これは違いますといっても、「「日本から出ていけ。何が子供じゃ、こんなもん、おまえ、スパイの子供やないか朝鮮ヤクザ」「約束というのは人間同士がするもんなんですよ、人間と朝鮮人では約束は成立しません」「悔しい悔しい朝鮮人」等のヘイトスピーチがなくなるわけではない。全て同じ被告らの憎悪から生まれているではないか。


上記被告第一準備書面は、これを学校側準備書面とどのように対峙できるのだろうか。まあただ、この書面では美久氏、ブレノ氏、西村父氏以外の認否をまだしておらずこれだけでは未完成とも言える。それでも裁判所がこのような根拠もろくにない政治的主観をもった主張を受け入れてくれるのかな?このままじゃいかんだろ、これ。

ともかく裁判所が認め得る根拠をもった書面を次回は期待したい。