京都朝鮮学校いやがらせ事件第三回口頭弁論傍聴記 2

前回エントリー続き。
次の第6準備書面では平成22年3月28日の京都河原町近辺における被告らの街宣活動のものであった。
平成22年3月28日午後2時頃、被告らの活動を批判する市民らの、朝鮮学校攻撃に対する抗議集会及びデモが行われた。これは同日に予定されていた被告らの京都朝鮮第一初級学校に対する3度目の街宣活動に備えて、これに警鐘を鳴らし広く市民に問うという性格を有するものであった。被告在特会はこれを事前に察知しこれに抗議する街宣活動を在特会HPに告知し呼びかけを行った。被告在特会らは当日、学校近辺で街宣活動が行われ、そしてそれとは別に四条河原町近辺でも街宣活動を行うために、被告川東氏、ブレノ氏による別動隊を組織したのだった。別動態は当日3時30分頃から被告川東氏、ブレノ氏らは被告在特会に呼応して四条河原町南西角に集結した10数人の参加者達、これらが原告朝鮮学校を誹謗中傷する街宣活動を行った。この街宣活動の中で被告川東氏は在特会を代表する現場責任者として十数人の街宣参加者に対して街宣活動の趣旨や注意事項を伝達、シュピレーコールを呼び掛けるなどの街宣活動の指揮者の役割を果たした。ブレノ氏はこの街宣活動の一部始終を撮影し、撮影した動画を「京都差別に反対、多民族共生デモに抗議」というタイトルをつけてニコニコ動画等の動画サイトにUPする役割を果たしている。この別動隊に対する活動の評価は、これは朝鮮学校に対して3度目の街宣活動を行うというのみならず。これと連動して、批判勢力に対しても攻撃的な街宣活動を行う事によって、より扇動性、過激性を増幅させる演出効果を狙い、それをもって原告朝鮮学校に存在をアピールしたものと評価できるものだ。街宣活動の参加者らは勧進橋児童公園の使用状況や前年12月4日の被告らの行動の事実に言及しつつ「拉致犯人」「スパイ」「テロリスト」「朝鮮進駐軍」等の反社会的集団を想像させる用語を使いながら原告朝鮮学校を始め広く在日コリアンを誹謗中傷する言動を繰り返した。この事によって原告を侮辱し原告の社会的評価を著しく低下させるとともに、原告の学校授業を困難にさせ、原告の関係者、保護者らに苦痛を与えた。さらにこうした街宣活動の様子は同日行われた、学校近辺での街宣活動の関連動画として互いに相乗効果を生む形でネット上に満影するに至っている。以上のようにこの別動態による街宣活動によって、原告は学校近辺の街宣活動と同じく有形無形の甚大な損害を被ったものである。

この第6準備書面は当初より取り上げる必要を感じさせた被告らの「京都カウンター街宣」に対する書面である。書面の中で当日の被告らの役割、効果を言及しそれらが被告らの連動した活動の一環であると結論づけている。そして、実はこの書面の持つ意味はもっと深くにあるものと推測できる。それは単に学校近辺で行われた被告らの活動のみがこのヘイトクライム犯罪ではなく、学校から離れたとこ、つまり日本全国、そして1年がたっても被告らが行う「公園奪還4勇士」等という馬鹿げた街宣デモ活動をも視野に入れた広がりをもたせる重要な布石となる書面と思われる。そしてこれは次の第7準備書面の動画投稿行為についても続いていく。

第7準備書面は、これも報告集会で頂いた要旨説明を載せる。
1 第7準備書面は、被告らの原告に対する侵害行為の概要を述べるとともに、被告らの一連の行為における被告M氏の役割を明確にし、被告M氏とその余の被告らに共同不法行為責任が成立することを明らかにする。
2 被告らによる原告に対する攻撃の概要
被告らは平成21年12月4日、平成22年1月14日及び同年3月28日、京都朝鮮第一初級学校の周辺道路、又は、四条河原町周辺において、原告及び在日コリアンに対する、名誉棄損・侮辱行為に及ぶ街宣活動を行った。しかし、被告らの原告に対する侵害行為は街宣活動に尽きるものではない。被告らは事前に、街宣活動をインターネット上で予告・周知し、多数の参加者を集めたうえ街宣活動を行う。被告らは更にその街宣活動を撮影し、インターネット上の自身のHPや動画投稿サイト「ユーチューブ」「ニコニコ動画」等にアップロードし、街宣活動を宣伝するとともに、新たな行動提起を行い更なる参加者を募るという運動論を採用している。動画閲覧者の注目を集めるために、被告らの街宣活動はことさら過激化、先鋭化している。被告らは、街宣活動において原告を攻撃するにとどまらず動画を配信し、原告に対するヘイトスピーチを不特定多数の動画閲覧者の知りうる状態に置くことにより原告に更なる攻撃を加えている。
3 被告ブレノ氏が分担した行為
上記の通り、被告らの活動において、動画の撮影、編集及び配信は不可欠の構成要素をなしている。被告M氏はかかる被告在特会らの街宣活動の撮影、編集及び配信行為を担当してきた。また、ブレノ氏は動画を配信する際には被告在特会の行動を賛美し、在特会の行動への参加を呼び掛けるキャプションを作成した。さらに自ら撮影した動画をDVDに焼付け「売上げは活動資金になります」等と述べ販売した。このように被告M氏は被告在特会の中で重要な役割を担い行動してきた。
4 被告ブレノ氏の共同不法行為
不法行為の成立には行為の違法性が要件となります。被告M氏の行為は、被告在特会らのヘイトスピーチをそのままにネット上に配信するものであり、それ自体重大な違法性を有する。また、ネット上に動画配信した場合、動画を保存した第三者が動画を再配信する可能性があり、原告らに対するヘイトスピーチが半永久的に公開され続ける危険がある。このような効果に鑑みれば、被告M氏の行為の違法性は重大だ。更に、被告M氏は動画を配信する際に、動画タイトル及び説明文等を記載し、被告在特会らの街宣活動の閲覧者を多く増やす工夫をしています。かかる行為も被告M氏の違法性を明らかにしている。さらに、被告M氏の行為は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約4条及び6条により、締結国が措置を講ずべき違法な行為にあたります。
② 共同不法行為の成立には行為の関連共同性が要件となる。この被告ブレノ氏は、動画タイトル及び説明文において、被告在特会の行動を賛美し、活動への参加を促した。また、被告M氏は平成22年12月30日付朝日新聞において「(撮影を行っているのは)行く度に喜ばれ、必要とされたから」と述べて、その真情を吐露している。他方、被告らも被告M氏に対してニックネームで呼びかけ、撮影対象を指示するなどしている。以上の事実により、被告ブレノ氏とその他の被告らの間には共謀に基づく役割分担があったのであり、主観的に関連共同していた事は明らかだ。
5 以上により、被告らの原告に対する街宣活動そのものが重大な違法性を有することはもとより、被告在特会らと通謀し、街宣活動の動画撮影、編集及びアップロードを行った被告M氏の行為も、被告らの街宣活動そのものと共同不法行為をなすものとして重大な違法性を有する事は明らかだ。したがって被告ブレノ氏は共同不法行為責任に基づき、原告に対して相応の損害賠償責任を負うものだ。

この第7準備書面は、在特会主権回復を目指す会等のストレートにヘイト活動をする他の被告らと違い、一見単なる撮影者を装うブレノ氏に焦点を絞った書面である。彼は中立を装い傍観者としての立場を強調する発言もあるが、筆者が知っているだけでも在特会・主権回復のヘイト活動にシンパシーを持っているのは明らかである。この書面はその具体性を明らかに彼が決して他被告らと違う立ち位置にいるのではない事を追求している。また、この書面においてはネット上の動画配信は半永久的にヘイト活動に加担される現状を訴えている重要な視点をもっている。
以上が原稿側弁護団による第三回口頭弁論で出された準備書面である。


さて、この後この民事裁判において初めて在特会主権回復を目指す会側被告らの準備書面が徳永弁護士より述べられた。裁判後にジャーナリスY氏のつぶやきにより『表現の自由―その公共性ともろさについて」(毛利透著)』から、「立川反戦ビラ事件」の項目を引用したものと判ったが、傍聴においてどうも聞き取りにくく、それでなくても難解な文書を読み上げるものだから、ところどころ???が出ておりますし完全ではありません。
では以下より、徳永弁護士朗読。
「被告らの主張する中心的なものは、彼らの活動は市民的政治活動であって正当な目的をもっている。ここで憲法が理念としている、開かれた民主政によって個人或いは小規模な市民政治活動を補償する必要が高い事を指摘したいと思う。京都大学憲法学を担当している毛利教授は表現の自由、公共性の問題について、確か反戦ビラ事件を題材にして次のように述べていた。本件のような活動では表現の自由は確かに憲法で保障されているが、実際に行使している人数は少ない。一般的な人は日常的な会話では議論したりするが、自分の意見を多くの人に聞いてもらう、そして願わくは 影響を与えるよう行動する人はごく少数である。圧倒的多数の人々はそれほど強い信念を持っている訳ではない。マスメディアに流れる情報に自動的に接する事に満足している。しかし、だからこそそのような状況の中で信念をもって活動する少数の人々の表現の自由を保障する必要が高いと言える。実際には現代社会において個人或いは小規模な集団の活動が世論に与える影響は非常に小さい。そのような活動に力を入れようとする人が少人数にしかいないのもある意味で自然な事である。だから、そのような中で強い信念から小さな可能性にかけて活動しようとする市民は憲法の理念という民主政府という体現する存在として特に保護されるに値する。このような資源の持ち主が右であれ左であれ一般人の特定の警報をもった人々であったとしても、その活動の高い価値はかわらない。社会で一般的な思想はマスメディアで頻繁に流通しているのであり、それと同じ考えの持ち主があえて個人的行動に出るインセンティブはないと言っている。行動に駆り立てられるのは多くは自分達の意見が社会で伝えられていないと考える人々である。そのような人々の自由を確保していく事が個人の自由から出発する民主政治の正当性を確保するためには不可欠である。また、このような市民活動は国家の制裁によって非常に熟しやすい性質を持つ事にも留意が必要である。多くの株式会社からなるマスメディアとは異なり市民活動は営利のために行われているわけではなく、それを担う個人個人にとっても金銭的肉体的負担は大きい。通常の人々の損得勘定からは出てこないような活動である。このような負担の大きい活動は国家の制裁、或いは制裁の脅威によって容易に挫かれてしまう。このように日本の大多数の自らの政治活動を行うわけではない国民は、民主的意思形成の正当性に関して極少数の政治的活動をうなずくに市民にフリーライフ?していると言える。自己の内心では政治的意見を述べている人々も普通はそれを実際表現するために、どう????。しかし、このように大多数の人々が表現しやすく?日本が民主政だと言えるのは敢えて表現しようとする個人にはその自由が保障されており、それにより主張されるべき意見の多くが主張されると???許されるからである。このように政府の正当性を支える市民に対して裁判所は制裁への敏感さを理解し。その負担をできるだけ低減する、つまり萎縮効果を減らすようすべきである。それが民主過程を維持するという意見審査権を行使する裁判所が???に沿った判断を???。」このように毛利教授は語っておりますけど同書において市民的政治活動の在り方?として述べられているのは、被告N氏らによる本件各街宣活動についても多く集まるとこがあります。実際、長年に渡って放置されてきた、原告による公園の不法占拠においても元校長が刑事処罰を受けサッカーゴールや朝礼台が撤去され法秩序が回復されました。被告らの政治活動がその端緒となる事は忘れてはならないと思う。ところで本件訴訟において原告は被告N氏らの街宣活動は少数民族を差別する差別的言ないしヘイトスピーチだとして表現の自由に及ばないものだと糾弾している。被告N氏らは原告による不透明な民族的教育事業の問題状況を広く知らしめ、公園不法占拠という違法と当局との癒着を糾弾するという正当な目的とした市民的政治活動だと考えている。ここに極めて先鋭??なあります。この??はその目的の正当性と手段相当性をめぐり、本件における中心的論点として今後の審議の中で民事訴訟手続きの中で争う事となる。しかし、本件街宣活動を主催した在特会主権回復を目指す会の周辺にあって、その企画運営に関与する事もなく独自の市民的政治活動を担ってきた被告N嬢、被告M氏の二人に関しては本件各街宣活動の目的の正当性と手段の相当性を離れ、ことさらに巨額の賠償をもたらす萎縮効果から開かれた民主政を護るという観点が強調されるべきだ。そして自らは何の政治活動にコミットしていない自動車を提供しただけの被告N・M氏についてはあえて論じるまでもないと思われる。
以上。


上記、被告側書面を見てはっきりしたのは、刑事裁判においても使われた論法、つまり自分達はあくまで表現の自由に護られた市民的政治活動をやっただけというものだ。
しかし、わざわざ「立川反戦ビラ訴訟」もってくるのはなんだろう?左翼への当てこすりのつもりか、それとも頼るべき論法がこれしかなかったのだろうか。意図を図りかねるが、徳永弁護士はこの「表現の自由」を保障されるべき論理を持ち出すなら、被告らに「君らのヘイトを唱える最後の拠り所である表現の自由というものは、君らが忌み嫌う左翼が体を張って護ってきたものだ」と教えるべきではないだろうか。引用するならそれくらい言わねばバチが当たると思うのだが。
さらに、報告集会において弁護団が述べていたが、少数の市民的政治活動の正当性を訴えるなら、何故「犬の方が賢い」「朝鮮人を保健所で処分しろ」「ゴキブリ朝鮮人、とっととうけろー」といった政治的主張の欠片もないヘイトスピーチが飛び出すのだ?徳永弁護士はそこに矛盾を感じないのだろうか。

最後に次回予定の段で、裁判長が徳永弁護士に次回まで被告人認否を行ってほしいと強い口調で要請されていた。もう、なんというか被告側がやっと準備書面を一つだしたら、学校側弁護団は三つも四つも出してくる。手数も違うし、一つの重さも違うと思うのは私だけだろうか。大丈夫か?

次回日程は4月19日(火曜日)午前11時より、101号法廷にて。



裁判所裏のタイ料理店焼麺ランチおいしゅうございました。