第15回口頭弁論傍聴記 5 


今回、在特会会長である自称桜井氏と事件首謀者である西村斉氏という、被告らの中で重要人物登場という事もあり、大変長くなった傍聴記となった。実際、この第15回口頭弁論は昼の1時半から終了が午後6時を超える長い時間である。

まず、自称桜井氏が法廷に呼び出された理由は、本件裁判で「在日特権を許さない市民の会」が被告となっているからである。朝鮮学校嫌がらせ事件を起こした主導勢力が、主権回復を目指す会在特会であり、何よりも原告が対峙するあらゆるものの象徴のようなものが在特会と言える。そして、前々回の裁判で、在特会とは自称桜井抜きに語れないという認定の元、彼を召喚したという経緯がある。

尋問が始まると、彼は最初、緊張気味のように見えたが、その後は、在特会の映像をご覧になった方はわかると思うが、それは映像で見る「在特会会長桜井誠」そのままのふるまいであった。
そして、自称桜井氏はこの裁判の後でニコ生をやっており、そこで「勝ち負けではないんでしょうけど、どっちが言いたい放題言ってたか」とまるで「言いたい放題」を誇るように述べていた。確かに自称桜井氏は言いたい放題をしていた。しかし、当然ながら裁判というものは「言いたい放題」をしたものが有利になるものでは決してない。

今回、傍聴記1,2の尋問内容を見るに、大枠で、原告弁護団が自称桜井氏の証言に求めたものは、①「権利能力なき社団」としての在特会の能力、②在特会の意思として原告である朝鮮学校を攻撃したかの2点が読み取れる。

まず、①の「権利能力なき社団」についてだが、これは被告側が、「在特会はファンクラブのようなものである」から訴訟対象にならないとの抗弁がなされており、それを突き崩すための尋問がおこなわれたと思われる。


権利能力なき社団」に関する定義は最高裁判例で以下のようにある。
民法 (法人の成立等)第33条 権利能力なき社団 3より
「権利能力のない社団というためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する」
最高裁判例(昭和39年10月15日)


このうち、「団体としての組織性」「財産の管理」は本部事務所・支部の存在、備品についての金銭のやり取りなどは、この日の証言と、証拠として提出されている在特会の規約で確認された。また、組織の体裁として「除名処分の事実」を確認、さらに、例え、在特会会長選挙が、どこぞの国の独裁政権のような選挙方法であったとしても「多数決の原理に基づいている」「総会の運営」と認定されたものと考えられる。そして、「構成員の変更にかかわらず、団体が存続する」は、自称桜井氏の証言中に以下のものが引き出されている。

在特会は貴方の存在が大きい。貴方が病気になったら会は存立しているのか。
その場合は、八木さんが筆頭副会長なので彼が指揮をとる。

つまり、自称桜井氏がいなくても、組織として存続するという事が証言され、立派に訴訟対象となる事が証明された。


さて、以上について、自称桜井氏は裁判中と後のニコ生でも、原告側代理人の質問を「裁判と関係ない質問」と述べていたが、裁判長が「在特会が裁判の当事者になりえるかを争っており、権利能力なき社団として、どの程度ものかを裁判所で把握しなければならない。それの確認だ」と親切丁寧に説明したとおり、本件裁判の重要な争点である。自称桜井氏には理解して頂けただろうか。


次に②「在特会の意思として学校を攻撃した」であるが、これも、自称桜井氏がまさに「言いたい放題」をしてくれたおかげで、重要な証言を次々と得られた。
一つは、在特会会長である自称桜井氏が「朝鮮学校襲撃を支持し、加担した」とする内容のブログ記事内容を認め、あまつさえ、以下の証言のように、その手法がどのような認識であるかを「言いたい放題」に語っている。

◆貴方は過激な街宣を促進しているというのはありますね。
前提の、過激なというのは貴方の主観であって、客観ではない。誰が過激だと決めたのか。

(裁判長:12月4日の街宣の動画はみたか)
見た。

(裁判長:あれは過激だと思うかそうでないと思うか)
過激ではないと思う。


あの12月4日の刑事事件となった手法を「過激」ではないとする認識は、在特会の攻撃性と悪質性の証左としてこれも重要な証言になったと思われる。その重要性は被告代理人が追加尋問で火消しに走った事で証明されたと見られる。
また、今後も同様の街宣を続ける意思があることを、そのまま示唆しており、本件裁判における仮処分の必要性を認定する上で重要な証言であったと言える。
この他に在特会の出鱈目な論理を突こうとする永住権の質問も含め、自称桜井氏がどんなに言い繕おうとも、原告代理人は何一つ裁判と関係のない質問していない。



次に証言台に立ったのは、事件の首謀者とされる西村斉氏である。刑事事件で明らかになったように、12月4日を主導したのは彼である。傍聴記3、4を読むと、原告弁護団の意図は、事件がどのような出鱈目によって引き起こされたかを明らかにする事であったようだ。

以下、明らかになった出鱈目。
① 「近隣住民」による一通のメールにより、この事件を引き起こしたというが、そのメールの主が「近隣住民」どころか何処の誰かさえもわっていなかった。西村斉氏は「何処の誰でもよかった」と証言。
② 西村斉氏が「近隣住民」に返したメールの返信時点(11月13日)で、何の裏付け調査もなしに既に事件を計画していた。
③ 役所担当者から「公園の使用状況」も聞かずに、既に12月4日の犯行を決定していた。
④ 11月19日の現地調査と称するものは「警備員」に聞き、担当区域ではない役所にいき一方的に喋っただけという杜撰なものであった。
⑤ 現地調査で聞き取ったというアンケートというものは「パフォーマンス」であり、その存在は甚だ怪しい。
⑥ 「市役所の担当者」に聞いたのは11月24日。そこでは「ゴールポスト」などが誰のものかを聞いただけで、撤去予定も聞いている。「手を焼いている」とかなど「市役所担当者」は話してないにも関わらず「朝鮮学校が近隣に迷惑をかけていると役所も言っている」と「市役所担当者の話」を捏造、一方的に「都市公園法違反」と判断。
⑦ 検察調書で「A(市役所担当者)さんは京都市がサッカーゴール、朝礼台の撤去を求めている話はしていた。が、朝鮮学校が校庭の代わりにつかう事は良いとも悪いともいっていないとも言っていません」と認めているにも関わらず、上記⑤⑥を行った。
⑧ 事件日まで専門家による調査をしていないにもかかわらず「電気の漏電の恐れがある」と吹聴。
⑨ 12月4日の襲撃時「自由使用の範囲内」の申し出を「公園使用の許可」を取ったと吹聴。
ゴールポスト等の撤去予定を「約束を守るわけがない」と一方的に判断。
⑪ 学校襲撃時、校内に子供がいた事を認識していた。
⑫ 子供がいようが「それよりも大事な事があると。子供に不法占拠をしているのを教えるのも大人の務めだから」という開き直りを証言。
⑬ 検事調書の「うるさくて授業にならない事はわかっていたが、朝鮮学校で行う授業など配慮に値しない」と認める。
⑭ 襲撃時「学校の土地はレイプして奪った土地だ。ちゃんと証拠もあるんですよ」というが、その証拠はなし。
朝鮮学校の内実を知りもせず「スパイ養成機関」と決めつけで虚言を吹聴。
⑯ 市役所担当者の「50年前からの公園使用」というのを「50年に渡る不法占拠」と捏造。


以上。12月4日の事件に関してだけでも上記16項目もあり、あらゆる出鱈目によって事件を起こした事を、西村斉氏は尋問において告白する結果となっている。

また、都合の悪い事は知らぬ存ぜぬとしている。例えば仮処分の件は、母親が通知を受け取り自分は知らないというが、裁判では通知が届いたものとして有効である。さらに学校建設地で「うんこの学校」と述べ、証拠物として提出されているDVDではっきりと言っているにもかかわらず認めず「忘れた」とするのは、小賢しく悪質であるとの印象を加算していくのは間違いない。

さらに、西村斉氏も「不法占拠のまた事件を起こせば」「僕はやり方を変えるが、他の人がいくんじゃないか。当然の権利だ」という「今後も朝鮮学校を攻撃する意思」が確認された。それは裁判長の以下の発言で決定的と見ていいと思われる。

(裁判長:他の誰かが行くという供述を引き出して、この上、まだ言う事があるのか)



そして、最後。仮処分に関して、裁判官より川東氏のmix日記についての質問があった時の被告側の狼狽ぶりが少し笑えた。

◆(証拠物を示し:川東mix日記「1000万円の寄附について」)3月28日のデモの時、「また、朝鮮学校の200m以内での街宣活動の禁止の仮処分が出た時、斉さんは、「相手が来て欲しくないと言ったら、こっちの勝ちやから、参った言うた所は行かんでええと言っていました」と川東さんが言っているが、貴方はそういう認識なのか。
えっ。間違いないです。

◆こういうやり取りがあったのは何時か。
わからない。これ、終わった後だ。

◆その後「実は斉さんは、朝鮮学校の200mには近づかない案を企画していたのだが、主権の〇〇が「朝鮮学校に行かないと意味がない」と強固に朝鮮学校にこだわって、コースを強引に朝鮮学校へ向けた」とあるが、これは本当か。
これは違う。僕はさっきも言ったが、3月6日の無年金をやりたかった。

(裁判長:違うよ。200mと書いてある。)
知りません。

◆では川東さんの思い違いという事か。
そうだ。

(被告代理人:仮処分を知っての趣旨と受け取られているが)
(裁判官:今は西村斉さんの認識を聞いている)
(裁判官:では200mというのは何を指しているのか)
わからない。


被告代理人が火消しをしようとしているが、普通に読めば「200メートルの範囲に入るな」との仮処分内容を事前に知っていたと読めるものだ。西村斉氏は「川東氏の思い違い」としているが、さて、裁判長はどのような判断を下すだろう。仮に嘘をついていると判断されると、上記証言は重大な意味をもつ事となる。
ちなみに、ここで本来なら「正直者である川東氏」も尋問すべきだと思うのだが、裁判長も原告側代理人も「もう、お腹一杯」というべきか、この日の自称桜井氏、西村斉氏の「言いたい放題」の証言でもう充分という判断か、それは見送られる事となった。
しかし、まあ、原告弁護団の追及もさる事ながら、被告らは実にオウンゴールの好きな人々である。


最後に、今回の第15回口頭弁論は、在特会会長である自称桜井氏と事件の首謀者である西村斉氏が証人として出廷して注目されたが、彼らは法廷の場で、「虚弱体質」を訴え、「本気でやれ」とのたまい、「言いたい放題」する事がまるで何かの本懐をとげるように語るっている。出鱈目で事件を起こし、その間違いを認めず、その不誠実な態度をして「戦っている」と思うその姿は、まさに、この「朝鮮学校嫌がらせ事件」を引き起こしたものを象徴していたと言えるだろう。






本日のグルメレポート

フランス料理「エール新町」。新町仏光寺上る。一品からの注文もありでスイーツがお勧め。