第7回口頭弁論後の在特会側報告集会を考察する

9月27日に朝鮮学校嫌がらせ事件の第7回口頭弁論が行われた。その事については前回のエントリーで傍聴記を掲載した。思い起こせば昨年9月に第一回の口頭弁論が開かれはやくも1年が過ぎた。当初から1年くらいはかかるだろうなという予想はあったが、まさかまだ最低3、4回程かかるとは思いもよらなかったのが筆者として正直なとこだ。
その原因として、まず被告側である在特会のどうしようもない準備の遅れというものがある。少なくとも裁判の前2回分は被告側が準備しておれば減らせた回数である。また被告側準備書面を期日通りに出していればこれも少なくとも1回は減らせたものであり、既に裁判所による「論点整理案」が出され、それをもって原告被告双方の証拠調べ、人証質問に入っているはずである。
つまり今までの7回のうち3回も減らせていたんですよ、奥さん。
前回も書いたがそれが実情にも関わらず「自称1万人を超すファンクラブ会長」である在特会桜井誠(本名高田誠)氏は「朝鮮学校を支援する反日左翼側は民事訴訟を提起し、左翼運動展開のために敢えて訴訟を長期化させる戦術を取っています」といけしゃあしゃあと述べておられる。
この「組織」のトップである桜井誠(本名高田誠)氏の発言からもわかるように、この在特会という「組織」のデマゴギー体質を表していると言っていい。
この他にも、彼らのデマゴギーの例は幾らでもあるが、今回取り上げる被告側の「報告集会」後の出来事で以下のような映像があった。

9月27日 川東大了 京都で無許可ストリートライブに遭遇
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15739446

①から⑤まであるのだ、冒頭、京都駅前で「反原発」のストリートライブが行われている
を見てこの裁判の被告でもある川東在特会副会長が警察に通報した。理由は「道路使用許可を取ってない」からという事だそうだ。
しかし不思議な事があるもんだ。この朝鮮学校嫌がらせ事件及び徳島県教組襲撃事件による懲役刑(執行猶予付き)となった御当人に、まさかこのような順法精神があったとは。
筆者の記憶では彼らは逮捕以前にも「自分達は何も悪い事はやっていない」と、その犯罪事実を認めようとはしない態度をとり続けていたはずだ。ならば刑が確定し社会的罰を受けて反省して順法精神に目覚めたのだろうか。いや、それもおかしい。彼らは刑事裁判で確定された犯罪事実を未だにこの民事法廷で何一つ認めていないではないか。
さらに、仮にこのストリートライブが「日の丸を掲げた類」のものであったなら、川東氏は警察に通報しただろうか?甚だ疑問である。
また、川東氏をはじめ事件の主役となった「チーム関西」は、在特会も含めて今まで散々「散歩」と称して示威行動、嫌がらせ活動を行っており、それらは道路使用許可をとってのものとは思えない。
もう一つ。この映像において川東氏はブレノ氏の撮影を必死に擁護している。映された人々が明確に「肖像権侵害」を訴えているにもかかわらず「アピールをひろめてあげる」と愚にもつかない屁理屈で執拗にとり続けるブレノ氏をだ。とても法の順守を訴える態度とは思えない。ようは「愛国無罪」の人が自分の気に入らないものに対して法律を盾にいちゃもんをつけているとしか見えないのだ。
在特会の手口というのは全てこれである。法も理屈もロジックも全て自分らに都合のいいように喧伝し盾にするのだ。それは被告側書面を読んでいても通じるものがある。


さて、余談が過ぎたが本論へ。今回の裁判終了後、在特会として初めて「裁判の報告集会」が催されたようだ。その映像があがっている。
在特会側は今までこの朝鮮学校嫌がらせ事件民事裁判を避けていたというか話題にもほとんどしないくらいの態度であった。あ、カンパ要請はしていたか。
それがここにきて何故か裁判に対して動員呼びかけを行い、報告集会を開いたのだ。
これは非常に興味深い動きである。今になって推測するに、恐らく今回、在特会代理人である徳永弁護士が提出してきた書面を見るに、やっと学校側書面に対するものに追いついたという側面が大きいのではないかと思われる。


第7回口頭弁論に出された被告側書面は以下のものだ。

第6準備書面 (原告第1準備書面に対する認否・反論)
第7準備書面 (原告第2、第3、第6に対する反論)
第8準備書面 (公正な論評の法理)
第9準備書面 (被告第6、第7準備書面の補充)

確かに詳細はまだ明らかではないが、書面副題を見るに対抗するものをもってきたようだ。
ただ、今まで提出されたもののように、ファンクラブだの、日本人は差別されているだの、知りません存じませんだの、そら情けないものになっていない事を期待したいのだが、その内容がわかるかもしれないという事で報告集会の映像を見てみた。

9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ①〜⑨
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15731840

まず、①から⑨まであり少し長いのだが、まず①で在特会副会長である八木氏が(1分〜)大きな大法廷をとるのでなかなか裁判が開けないなどという理由でここまで進行が遅れていると言うような説明をしているが、当然違う。遅れているのは在特会の対応の遅れが原因である。そしてこの後に西村斉氏の行政回りの報告らしきものがあるが(2分48秒)、彼らの都合のいい解釈で綴られたものと言えるもので、この行政回りに関してはエントリーを別にして、どのように事実と違うのか明らかにしたい。最後に徳永弁護士が登場し②の冒頭から徳永弁護士の自分語り?が始まる。
彼は朝鮮総連に対する批判をするのだが③から(1分より)拉致事件以降
「総連内でゴタゴタが後でわかった。(2分40秒より)朝鮮学校の内部を明らかにしていない。民族教育の中身について一切明らかにしていない。肖像画が飾られている。洗脳教育。
朝鮮総連を主体となっておこなう民族教育について疑問がある。証拠もたくさんある。
この裁判は西村君らの行動によって刑事処分はあったが、もう一度朝鮮学校について見直す機会を与えてくれた。そう思い裁判に関わった。」
という興味深い発言がなされた。
この中で注目されるのは徳永弁護士の「総連に反省してもらう」という個所を記憶に留めといてほしい。彼は総連事業により「民族」を考える契機が生まれとし、その総連が「日本人拉致事件」において「内部で葛藤があったというのは後でわかり」ながらも、(個人崇拝)路線を変えない総連に対する複雑な思いを語るのだが、ここにこの徳永弁護士の裁判の目的が「総連に反省をしてもらう」というのが線引きと伺える。
しかし、これは被告である在特会と異なるものと言っていい。在特会の総連に対する「目的」は本質的に「全ての破壊」と言っていい。彼らが街頭で叫ぶスローガンは総連のみではなく「朝鮮人を叩き出せ」であるからだ。
筆者は在特会が街頭では過激なスローガンを掲げながら、実際はそこまでは考えてないという話は聞く。例えば先の「朝鮮人を叩き出せ」も実は在日コリアン全体には言ってない。反日朝鮮人にだけ言っていると言う。しかし、それも馬鹿馬鹿しい言い訳で「反日」というのは誰が決めるのだ?その「反日在日コリアンの生殺与奪を在特会が握っているのか?また街頭で大声を張り上げ叫ぶスローガンはそのままストレートに解釈されるのは当たり前ではないか。このような論評にも値しない言い訳を誰が相手にするのだ。
もっというなら、在特会は何も考えていないと言っていいかもしれない。彼らが愚にもつかない言い訳が通用すると思う事自体、何も考えていない証左ではないだろうか。
恐らく在特会内部に意見の統一というものもないかもしれない。ただ、言えるのは、ベクトルだけは何も考えずに「全ての破壊」に向かっている点である。
とまれ、この裁判に臨む徳永弁護士の思惑と被告である在特会とは天地程の差があると思われる。

さて、映像をさらに進めていくと
(6分20秒より)「被告らの差別的言質に対する防御を「公平な評論」という法理論にもとづく、公共に対する意見表明であるなら、虚偽ではなく事実に基づいたものであれば、例え偏見に満ちた意見であっても愚劣な意見であっても、それは政治的な意見として尊重すべきだ。熾烈であっても侮蔑的であっても保護される、そういう議論です。この理論を前面に押し出し、このルールでもってこの裁判は裁かれるべきという主張です。
人権を口にするならこれをわきまえよ。(7分55秒より)」
と述べられ、続く④において
「(冒頭から)事件時、西村氏の発言は事実に基づいた論評なんだよ。一つは朝鮮学校が50年に渡り不法占拠してきた事の糾弾だ。(学校側は)これらの主張を封殺。社会に出さないという目的もっている。しかしその目論見は西村君が刑事起訴され同じ日に学校側元校長も処罰を受け、その目論見は瓦解したと思っている。
今回の法廷では元校長が起訴された事によって主張の事実が立証された。
今後、裁判で重要な争点になると思われる朝鮮学校はスパイの養成機関なんだと、という言葉があるが、あとは拉致をした総連の傘下にある朝鮮学校、彼らからすればそれが民族差別だというが、これは事実だ。これが裁判で認められるにはいくつかハードルがあり、まず、北朝鮮が犯罪をおこなっているというのは立証しなくても明らかで、次に総連が北朝鮮支配下にあるのだというのが一つテーマで、二つ目に朝鮮学校がその総連の支配下である、三つ目にその学校で行われている、彼らが民族教育だとする中身、個人崇拝の洗脳教育が行われている、この点について立証する必要があると思っている。
サブテーマとして、朝鮮大学も含めて朝鮮学校工作員の養成機関である事を明らかにする、この3つ、4つを立証するのが我々のテーマである。
原告側はそれを頬冠したままだ。
(4分40秒より)民族が民族のままであるうるために民族教育は大切なのだと、それはそのとおりだと書面に書いた。まったく同意しますと。
だけれども、貴方方のやっている民族教育はそんなものではない。」
と語っている。
これらは今回提出された被告書面の内容となるが、要するに徳永弁護士の言うロジックとは
北朝鮮指揮である総連傘下の朝鮮学校で行われているのは北朝鮮の個人崇拝による国民教育である」その上で「事実に基づく公平な論評は保護されねばならない」と言っている。そのために後に出てくるが「人間として扱わない」類の発言は「弁護に窮する」と認めている。
さらに後に出てくるが「朝鮮学校の元校長が略式起訴を受けた事によって学校が公園を不法占拠していた事実が立証された」というものである。


はっきりというが無茶苦茶である。
要は総連、朝鮮学校を「悪魔化」して、全てのヘイトスピーチに免罪を与えるとんでもない屁理屈と言わざるえない。

まず、総連と言うのは日本の公安調査庁公安警察の監視対象になっているのは事実である。しかし、それをもってまるで悪の組織のようにイメージづけるのは大きな間違いである。ならば「日本共産党」はどうなるのだ。同じように監視対象となっている。過去の成り立ち、政権側の都合により、また公安の飯のタネのために指定を解除されていない。そしてこれを言い始めたら、被告である在特会を含む行動保守そのものが現在の公安の監視対象になっているではないか。
また、個人崇拝というが、確かに筆者も奇異に思う事はあるが、朝鮮学校の苦しい時期に北朝鮮による援助が行われた事実は重いし、何よりもそれは朝鮮学校とそこに通う子弟、父兄が考える話で、朝鮮学校を無くそうとする連中が言える事でない。
税金を払っているからと言える権利があるなどという被告らの言い分を予想するが、それならば日本の私学で奇怪な教育をしていると思われる学校には何故言わないのだ。
まさに西村斉氏もいうように「朝鮮学校」だから難癖をつけると言っていい。

でも、何よりもここで言わねばならないのは、その「北朝鮮の国民教育を行う朝鮮学校が生み出した卒業生達」が何をしたと言うのだ?
この日本社会に溶け込み、納税をし、仕事に勤しみ、家族を養い、生活を営み、当たり前の事を当たり前にしているだけではないか。さらにいうなら、学界、芸術、芸能、スポーツと有意な人材を輩出し日本社会に貢献している。それの何が問題なのだ?
普通の学校である。

もう一度いうが、その「朝鮮学校」という理由だけで行われる、ヘイトスピーチが「事実に基づく公平な論評」というもので許されるはずがない。

次に「朝鮮学校の元校長が略式起訴を受けた事によって学校が公園を不法占拠していた事実が立証された」というものについては原告第3書面に書いてある通りで、それが事実として認められるかという問題がある。

朝鮮学校いやがらせ事件における公園使用の経過(弁護団第三準備書面より)
http://d.hatena.ne.jp/arama000/20101215/1292420581

しかもサッカーゴールとスピーカー設置が「不法占拠」と言えるものかという問題をすっとばしているし、この件については何よりも在特会側が訴える「近隣住民の苦情」があったとの証明をしろとの話になると思うのだが。次回DVDにおいて、西村斉氏、荒巻氏による事前調査なるもので出てきた例の「ガードマン」の映像が出てくるそうだが、このガードマンが証人として出廷してもらわねば証明と言えるのだろうかという疑問があるし、何よりも先の「近隣住民」自身の出廷が必要になってくるのではないだろうか。それを是非にも期待したい。

京都朝鮮学校いやがらせ事件が起こるまでを振り返る
http://d.hatena.ne.jp/arama000/20110117/1295260045



さて、字数は多くなってきたので後の⑤から一応発言を書き連ねて見たのでそのまま列挙する。


9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ⑤
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15733109

質問タイム。(冒頭より)
西村斉氏 朝鮮学校が総連の支配下にある。過去に学校に公園がなくなると困ると言う要望書があるが、これに総連が学校代理人になっている。
攻めなきゃいけない突破しなくてはいけない。
原告側弁護士の半分はなり立てで、ほとんどが無償でやっている。
証人はどうするかについては、西村君は出てもらわなくてはいかんだろ。そこで行政回りをしているのを整理してほしい。(4分〜)の指示にしたがってくれ。頼むから。
場外ではなく裁判と言うリングの上で裁判官と言うレフリーがいる。ルールがある。
西村君が裁判で言った事が嘘ではないなという形にしたい。
元校長が刑事処分を受けてなかったら、なかなか難しい裁判だった。

9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ⑥
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15733377
役人の事なかれ主義が癒着を生みだす。
共産党は逃げた?まずくなったから?
総連は人権擁護するが自分達のしている人権侵害には問題にしてない。
(4分より)資料として2冊の総連本。
朝鮮学校の教育は民族教育というよりも北朝鮮の国民教育だ。(5分より)
(6分10秒から)
総連の都合のいいように人権を利用しているが、それを鵜呑みにしている日本の弁護士がいる。

9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ⑦
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15733692

(1分35秒より)川東の発言「朝鮮人は人間じゃない」は弁護に窮すると書いた。
(3分40秒より)この裁判は肉を切らして骨を断つ。というのを考えないと勝ちきれないなと思っている。「朝鮮学校は反省しろ」とするために多少、犠牲になってもらわなければいけない。これは戦術だと理解して下さい。
原告側は全て差別だとしているが、こちらは弁護で窮すると認めて、全部が認められるわけじゃないですよねとする。

9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ⑧
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15733863

事実に基づいた話だ。
(20秒より)総連の民族教育
総連の話は彼らが一番避けたかったとこ。(1分より)
(1分15秒より)前回法廷で差別的な発言があると、それは代理人が名誉棄損していると法廷でいった。その部分は「朝鮮学校は学校じゃない」という部分のところ。
朝鮮学校の民族教育」のとこは読み上げるなというとこを読み上げるなといわれた。
これは証明妨害である。
おかしいな
(3分5秒)ネット上で公開してほしい。
(3分50秒)互いの書面を公開してやってくれている人がいる。
西村斉氏、ちょっと変えといてやったらいい。


(という事でブログ掲載の承諾得ました)


9月27日 【決定】 京都にて報告集会 ⑨
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15736144

(原告側は)自分達に都合の悪いものを差別だ人権侵害だという。それが現実にあるという事をあそこでわかった。
(1分55秒より)負けるとは思ってないけど、雑魚でも足捕まれたらさ、大変だからね。
西村、中谷の調書は出そうかなと。
(7分より)抽選にいくためだけに来る人はたくさんいます。向こうは抽選のためのボランティアが多い。





と、まあ、徳永弁護士の放談が続くのだが、余程機嫌がよいふうにみえる。(特にこの⑨のとこは火に油ですな)
徳永弁護士にとってやっと今回の提出書面で原告にまがりなりにも追いついたという思いと、裁判への思いを喋れる機会ができたせいかもしれない。
最後にもう一度蒸し返すが、この報告集会で徳永弁護士の話を聞いた人らは言っている事を本当に理解しているのか?という事だ。
徳永弁護士が川東氏の発言を認めてという事は賠償金の派生を認めたという事に等しい。
元々、刑事事件による有罪判決により賠償金の派生は揺るぎないものと思われるが、この民事裁判にその当事者側がそれを認めると言う事は、普通の民事裁判では「負け」を認めたと言えるものだ。徳永弁護士は「肉を切らして骨を断つ」と言っているが、ようは減額闘争に入ったと宣言したようなものである。
それをこの報告集会に聞いた人々はそれを判っているのだろうか?
次に理解をしていたとして、ならば、彼らの「勝利」のラインは何処にあるのだろう?
徳永弁護士の考えるラインというものを推測するに、それは主に幾ら減額できるかというラインになるのではないだろうか。ここは書面を見て改めて言及したい。正直、主義主張というものではないような気がするのだが。
では、聞いていた人々はどうだろう。
在特会の主張する「50年に渡る不法占拠」が認められるという事なのだろうか?
しかし、それはまずあり得ない。では何が目標なのだろう?
なんかね、彼らは正直何も考えてないんじゃないかと、被告である在特会副会長の八木氏の裁判報告を見ていてそう思った。

在特会公式HP「民事訴訟の報告」
http://www.zaitokukai.info/modules/wordpress/index.php?p=339

ただ、闘うと言っているのみ。抵抗すりゃなんかいい事あるみたいな。
なんか、「お前はもう死んでる」という北斗神拳のセリフを思い出しましたよ。