学校側第一準備書面 3 

「学校側第一準備書面 2」より継続





第2 原告の損害(有形損害)

 1 有形損害(財産的損害)

  (1)具体的な金銭支出

  ア 平成21年12月4日の街宣活動に関するもの
①スピーカー                   47、040円
被告らは、平成21年12月4日、勧進橋児童公園に設置された原告所有のスピーカー及びコントロールパネルの配線コードをニッパーで切断して損壊した。かかる損壊行為による損害(修補費用)は、4万7040円である。
②ビラ配布費用                     640円
平成21年12月4日の街宣を受け、同月22日、「朝鮮学校を支える会・京滋」が、京都会館において、「朝鮮学校への攻撃を許さない!12・22緊急集会」(以下「緊急集会」という。)を開催した。
本件学校は、同集会の案内ビラを児童らの保護者に配布した。これは、被告らによる支援者を広く募り、被告らによる再度の攻撃をから学校を防衛するため、必要不可欠であった。
上記ビラの配布費用は、670円(5円×1校×1 3 4名)である。
③小計                      47、680円

  イ 平成22年1月14日の街宜活動に関するもの
①課外授業費                    4、860円
被告らによるインクーネット上の1/14街宣予告文の掲載を受け、本件学校は児童に対する被害を未然に防止するため、同日については、通常の予定を変更し、課外授業及び課外保育を行うこととした。
低学年については琵琶湖博物館において、高学年については国立民族学博物館において、課外授業が実施された。琵琶湖博物館の入場料は無料であったが、国立民族学博物館は1名あたり90円の入場料が必要となった。
平成22年1月14日当時、本件学校高学年に所属する児童らの数は、54名であった。よって、高学年の課外授業のために支払った入場料は、4、860円である。
②観光バス代等                 109、000円
上記①に記載した課外授業を実施するために、本件学校は、観光バスをチャーターした。
観光バス代は、低学年、高学年共に各52、500円(消費税含む)であった。また、高学年については、4、900円の通行料も必要となった。
よって、本件学校が支払った観光バス代及び通行料の総額は、109、000円である。
③お知らせ文書配布費用                 670円
上記①に記載した課外授業及び課外保育の内容等を児童らの保護者に知らせるため、本件学校は、全児童らに対し、「1月14日の課外授業について」と題するお知らせ文書を配布した。
上記お知らせ文書の配布費用は、670円(5円×1校×134名)である。
④小計                     114、540円

ウ 小括
以上の通り、原告は被告らの不法行為により、計16万2210円の支出を余儀なくされた。

(2)対応に要した時間・労力等
本件学校の教職員らは、被告らの一連の不法行為により、種々の対応を余儀なくされた。かかる対応を取ったことにより、同人らの通常業務に大きな支障が生じた。以下、その概略のみ記載する。

ア 平成21年12月4日の街宜活動に関するもの
①街宣活動の前
被告らは、平成21年11月19日、インターネット上に、本件学校に対する街宣を予告する文章を掲載した。本件学校では、上記予告を受け、教職員らやアボジ会・オモニ会の役員らによる対策協議を行ったり、京都府警及び南警察署への警備要請を複数回行わざるを得なかった。
上記予告内容では街宣の時期・態様が明らかにされておらず、本件学校においては、常時の備えを要し、教職員内部での役割分担の協議や緊急時に対処するための連絡網の作成等を事前に行った。
②街宣活動当日
12月4日の街宣活動の当日、校内には、授業や他校との交流会を行おうとする初級部の児童らが存在した。
低学年については、上記街宣活動により授業を妨害されることとなった。交流会を行っていた高学年については、上記街宣活動の中でも交流会を継続することができたが、街宣活動により、下校予定時刻が1時間程延びてしまった。その間、教職員らは、児童らの不安を除去するため、新たなゲームを考える等の対応に苦慮することとなった。
被告らが街宣活動を行っている間、男性教職員らは、授業や交流会を中断し、直接被告らに対処した。また、女性教職員らは、泣き叫ぶ児童らをなだめたり、上記の通り、児童らの不安を除去するために対応した。
また、教職員らは、被告らによる上記街宣活動が終了した後も、夜遅くまで今後の警備態勢等の打ち合わせを行った。
③街宣活動の後
上記街宣活動の直後、本件学校の校長を責任者とする対策委員会を設置し、学校への警備態勢の整備を含め、被告らに対する諸般の対策を講じた。
特に、警備は、学校の教職員、保護者ら、及びその他の学校関係者らが交替で行った。南署への警備要請も引き続き行った。また、本件学校では、教職員らが全員出席し、保護者らに対する説明会を開催した。その際、街宣活動当日の状況説明等を行った。

イ 平成22年1月14日の街宣活動に関するもの
①街宣活動の前
被告らは、平成22年1月7日、再び本件学校に対する街宣に関する予告を行った。
本件学校では、上記予告を受け、校長をはじめとする教職員、及びアボジ会・オモニ会の役員等で、街宣を予告された1月14日の学校業務について協議した。
その結果、1月14日は、本来ならば通常の学校業務を行うべきところではあったが、児童らへの悪影響を懸念し、上記1(1)アの課外授業及び課外保育を行うこととした。教職員らは、かかる課外授業及び課外保育の内容を決定し、当日の具体的な段取りを組むなど、実際の手配に時間を割くこととなった。
②街宜活動当日
1月14日は、上記の通り、通常の学校業務内容を変更し、上記1(1)アの課外授業及び課外保育を行った。また、当日は、児童らが被告らと接触することを避けるため、どうしても午前11時までに児童らを学校外に送り出さなければならなかった。そのため、初級部においては、2限目まで行った授業について、その授業時間や休み時間を短縮せざるを得なかった。
また、街宣活動の影響により、課外授業及び課外保育に出ていた児童らの帰校時刻が延長されたため、それに対処した教職員らの勤務時間も延長された。

ウ 平成22年3月28日の街宣活動に関するもの
①街宜活動の前
平成22年3月16日、被告らは、インターネット上に3月28日の街宣に関する予告を行った。3月28日は日曜日であったが、サッカーの試合で児童らが学校に出入りする予定であった。そのため、教職員らは、児童らが被告らと接触することを避けるための対策協議を事前に行った。
②街宣活動当日
上記の通り、3月28日の街宣活動当日は日曜日であった。しかし、不測の事態に備え、校長及び教務主任が出勤した。

エ その他
上記以外にも、本件学校の教職員らは、被告らによる一連の不法行為により、警察への対応等を余儀なくされ、その結果、通常業務に大きな支障が生じた。

オ 小括
以上の通り、被告らの不法行為は、教職員ら個々人の業務に多大な影響を及ぼし、その結果、本件学校の業務に支障を生じさせた。詳細については、追って主張する予定である。
(筆者参照 この本件学校の教職員らが対応に要した時間・労力等というものは「第9準備書面」として提出されている)
第4回口頭弁論傍聴記 http://d.hatena.ne.jp/arama000/20110420/1303268157

2 財産的損害ではあるが金額に評価しつくせないもの
なお、上記に列挙した原告の有形損害(上述に列挙した費目、及び、次回以降の書面にて主張する費目)に関しては、必ずしも損害の全てを数値に評価しつくせないものもある。これらにっいては、「原告が財産的損害を被ったことは確実であるが、その額を証拠で証明することが困難である」場合に認められる無形損害(澤井・231頁)として評価されなければならない。
これは、一般に、「財産的損害について金額の証明が困難な場合に、財産的損害の賠償を慰謝料の形で補完することが実務上、しばしば行われ」るところの一類型として認められているものである。


第3 原告の損害(無形損害)

 1 はじめに

(1)「無形損害」の判断要素
一般に、民法710条の非財産的損害に関しては、自然人に関しては「慰謝料」、法人に関しては「無形損害」との表現が用いられ、その算出にあたっては、裁判官が諸般の具体的事情を考慮して裁量によって決定するものとされる(幾代=徳本「不法行為」280頁)。そして、その判断要素としては、
 1、被害の程度・態様
 2.被害者の職業・社会的地位・身分
 3.侵害行為の態様
 4.侵害行為後の加害者の態度
 5.被害者・加害者間の関係
といったものが挙げられる(田中康久「慰謝料の算定」現代損害賠償法講座7 267頁以下、吉野衛「慰謝料の算定丿実務民事訴訟講座7 204頁以下など)。

本件のような名誉毀損事案による損害額算定上の重要な要素としては、
 被害者側の事情として
 1.被害者の年齢・職業・経歴
 2.被害者の社会的評価(の低下の程度)
 3.被害者が被った営業活動上・社会生活上の不利益
 加害者側の事情として
 1.加害行為の動機・目的
 2.名誉毀損事実の内容
 3.名誉毀損事実の真実性・相当性の程度
4.事実の流布の範囲、情報伝播力
といった整理も行われている。

(2)法人の「無形損害」と自然人の「慰謝料」がほぼ同義と考えられていること
こうした判断要素に関しては、今日、原告が、法人であるか自然人であるかによって、特段の区別が行われておらず、「慰謝料」と「無形損害」はほぼ同義のものと見なされている。例えば、塩崎論文の整理において、自然人の「慰謝料」と法人の「無形損害」は特段の区別なく整理されているし、「慰謝料算定の実務」(ぎょうせい、千葉県弁護士会編)では、正面から「法人の慰謝料」「法人についての慰謝料認容額」という項目が設けられ、一覧表においては、原告が自然人であるか法人であるかに関わらず「慰謝料」名目で無形損害が紹介されている。
確かに、純理論的に考えれば、自然人の「慰謝料」の場合、①狭義の慰謝料の対象である「精神的・肉体的苦痛」と、②調整的慰謝料、包括的慰謝料の2つの要素に整理されうる。しかし、①の「苦痛」の要素についても、その金額的評価はそもそも立証不可能であり、結局のところ、公平の見地から、②との明確な区別もされずに全体としての金額が裁判官の裁量で決せられている。つまり、慰謝料は、「生じた損害」の計量ではなく、「賠償せしむるを相当とする額」の算定であるとされ(我妻「事務管理・不当利得・不法行為」203頁)、原告がその額を証明する必要がなく(最判H32.2.7・民集25-383)、裁判所が斟酌すべき事情は無制限で(大判T9.5.20・民録26-710)判決理由中にその根拠を示す必要もないとするのが、判例理論である。
こうした点を捉えて、既にある事実が証拠により「発見されるのではなく」、裁判官の裁量によって「創り出されるべきもの」と表現されることもある(西原道雄「人身事故における損害賠償額の法理」ジユリ339-26)
これに加えて、「実態に即して考えれば、法人構成員の精神的苦痛の団体化も否定できない…」として法人の精神的苦痛も観念できるとの有力説もあり(澤井234頁)、「慰謝料」「無形損害」の境界はあいまいとなっている。
このため、今日においては、「財産的損害と非財産的損害の違いは、算定の基準があるかどうかという程度のもの」(内田「民法Ⅱ」・393頁)といわれ、自然人に特有の「精神的苦痛」の側面は、事実上、損害額の決定においてはさほどの独立した意義を有しない。こうして、法人の「無形損害」は、ほぼ「慰謝料」と同列で整理され、同種の判断要素の検討により高額の賠償費目も認容されているところである。

(3)加害者側の事情
上記の文献にもあるように、無形損害の判断要素の中には「侵害行為の態様」「侵害行為後の加害者の態度」「加害行為の動機・目的」といった加害者側の事情がある。
それら加害者側の事情は、本件においては、人種差別撤廃条約の観点からの検討が必要不可欠である。
そこで、終局的には損害賠償額を決定するための要素ではあるが、それら加害者側の事情に関しては、被害者に生じた損害とは若干観点が異なるものとして、詳細な主張は第2準備書面に譲る。

(4)原告の無形損害の概要
本件において、原告が受けた無形損害は、主として、以下の3つに整理することができる。
 ・名誉毀損による社会的評価の低下に伴う損害、
 ・学校事業の遂行に与えた損害、
 ・保護者、関係者らの苦痛の無形損害としての評価
 以下、順に詳説する。

2 原告及び本件学校の名誉・社会的評価が毀損されたこと
 (1)はじめに
被告らは、一般人が通行する路上・校舎前において、拡声器を用いて近隣の一般住民にも聞こえるような態様において、事実無根の虚偽の事実を摘示した。さらに、被告らは、こうした街宣の様子を撮影した動画をインターネット上を掲載して、極めて多数の人々が容易に視聴し、複製・再頒布できる状態に置き、虚偽の事実を広め、原告の名誉・信用を著しく毀損したものである。以下、被告らの具体的発言内容について検討する。

ア12月4日の街宣
(ア) 発言内容:「公園を50年も不法占拠している。」、「日本国民が公園を使えない」
         摘示事実の概要: 通常一般人の理解として公園の「占拠」
         とは、看板・標識・柵・仮設建物などを設けるなどして、敷地
         の全体(ないし面としての重要性を有する一定箇所)を、相当
         の長時間にわたり、他者の侵入を許さない形態で使用すること
         を示唆する。かかる「占拠」が50年もの長期にわたり「不法」
         に行われている事実を指摘するもので、社会的評価を低下させ
         る事実摘示である。実際のところは、原告がこのような排他性
         を持った占拠などしたことはないし、京都市や地域住民とも協
         議を重ねながら譲り合って使用をしてきた経緯もある。いずれ
         にしても、明らかに事実無根の虚偽の事実摘示である。

   (イ)発言内容:「この学校の土地も不法占拠だ」「我々の先祖の土地を奪った。
         戦争中、男手がいないとこから、女の人をレイプして虐殺して奪
         ったのがこの土地。」「ここも(学校敷地内をさして)もともと
         日本人の土地や。お前らが戦後奪ったんちやうんかいこら!」「こ
         れはね、侵略行為なんですよ、北朝鮮による。」「戦後焼け野
         原になった日本人につけこんで、民族学校、民族教育闘争、こう
         いった形で、至る所、至る日本中、至るところで土地の収奪が行
         われている。」
         摘示事実の概要: 原告が、本件学校敷地についても、レイ
         プ・虐殺などの重大な犯罪行為をするなどしながら、他者の財
         産権を侵奪して取得した社会的評価を低下させる虚偽の事実
         を指摘している。

   (ウ)発言内容:「ここは北朝鮮のスパイ養成機関」
         摘示事実の概要: 本件学校が、朝鮮民主主義人民共和国
         違法な工作員を養成する機関であるという社会的評価を低下
         させる虚偽の事実を指摘している。

   (エ)発言内容:「スパイの子ども」「こいつら密入国の子孫」「犯罪者に教育さ
         れた子ども」
         摘示事実の概要:まず、父母及び子どもの名誉毀損との関係
         でいえば、上記発言は、本件学校に通う児童らの父母が(もし
         くは児童ら自身が)、不法な諜報活動に従事する者(「スパイ」)
         及び違法な密入国を行った者であるとの事実摘示、さらに、犯
         罪者に教育されているなどといった事実摘示となっている。
          これは、本件学校の名誉との関係でも、通常一般人の理解と
         して、本件学校児童らの大半が上記のような不法性を帯びてい
         るとの事実榜示、さらに、教育主体たる原告及びその教師らが
         犯罪者であるとの事実榜示である。これらは、原告の社会的評
         価も低下させる虚偽の事実である。

(オ)発言内容:「ここは横田めぐみさんはじめ、日本人を拉致した朝鮮総聯
        「朝鮮ヤクザ」
         摘示事実の概要:本件学校が、日本人拉致事件に関与したか
         のような事実、組織的暴力に従事する団体であるとの事実を摘
         示するものであり、いずれも原告の社会的評価を低下させる虚
         偽の事実である。

(カ)その他の侮辱的発言について
上述のような事実摘示を伴う発言内容に加えて、被告らは、各街宣において、聞くに堪えない侮辱的言辞を連呼している。一般に、「客観的根拠を示さない単なる主観的評価の言明にすぎないような言辞であっても、それが公然となされる場合には、それによって被侮辱者に対する社会的評価にマイナスの効果ないし影響が証することは否定しがたい」(最判S58,11.01刑集37-9-1341、中村補足意見)。特に、不当な人種差別・民族差別の動機が表現されて公然と行われる侮辱行為が、世間に対して公然と行われる場合、日本社会の差別意識との相乗効果をもたらし、社会的評価の毀損は顕著となる。
12月4日の街宣活動に関しては、「朝鮮学校を日本からたたき出せ。」、「出て行け。」、「朝鮮学校、こんなものはぶっ壊せ。」、「なにがこどもじゃ、スパイのこどもやんけ。」「キムチクサイで。」、「約束というのはね、人間同士がするもんなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません。」、「端のほう歩いとったらええんや、はじめから。」「朝鮮学校、こんなものは、学校じゃない。」などといった侮辱的な言辞が、社会的評価の毀損を生じさせていることは明らかである。

イ 1月14日の街宜
1月14日の街宣においても、公園敷地の不法占拠、学校敷地の侵奪・不法占拠、北朝鮮政府諜報活動及び諜報員養成活動への従事、児童らの父母や教職員の犯罪者性、拉致事件への関与についての事実摘示が行われた。いずれも原告の社会的評価を低下させる虚偽の事実である。
また、12月同様、街宣においては極めて悪質な侮辱的言辞も行われた。具体的に、これらの一部を抜粋すると、以下のようになる。

街宣の予告文において:

   「1・14朝鮮学校による侵略を許さないぞ!京都デモ 子供
   を盾に犯罪行為を正当化する不逞鮮人を許さないぞ」
   そして自分達の悪業を棚に上げ、ひたすら涙、涙の被害者面で
   事実を捻じ曲げようとするあたりは、不逞鮮人の伝統芸能であ
   る。・‥約50年にわたり児童公園から日本の子供たちの笑い声
   を奪った、卑劣、凶悪民族から公園を取り戻す為に行動を起こ
   します。

横断幕の記載内容:
デモ行進の先頭の3名によって、「朝鮮学校の公園占拠を許すな! 不法占拠を『学校襲撃』にすり替える朝鮮人の下劣 差別迫害されている朝鮮人は本国へ帰れ!」と大きく書かれた横断幕が掲げられていた。

街宣中の発言内容:
    「不逞な朝鮮人を日本から叩き出せ。」、「日本の子どもたちの笑
   顔を奪った卑劣、凶悪な朝鮮学校を我々日本人は決して許さ
   ないぞ。」、「北朝鮮工作員養成機関、朝鮮学校を日本から叩き
   出せ。」、「戦後この朝鮮人は治安が整っていない時期に、なめた
   ことに、旧日本軍の、陸海軍の飛行服を身につけ、土地の不法
   侵奪、金品略奪、強姦、銀行襲撃、殺戮、警察襲撃など、暴れ
   まくったんです。」、「朝鮮人として、その自分の土地として勝手
   に登記し、現在に至っている。」、「朝鮮学校朝鮮学校と言いま
   すがこれはただ自分たちが学校という名前をつけただけであっ
   て、何ら我が国の認可を受けた学校でも何でもない。」、「ここに
   働く括弧付き教師についても単なる北朝鮮のもっとも優れた工
   作員である。教師とは緑もゆかりもない学校の名に催しない。
   教師の名に値しない。」、「スパイの養成機関、日本人拉致の養成
   機関、朝鮮学校を解体しろ。」、「朝鮮人を保健所で処分しろ。」、
   「犬の方が賢い。」「朝鮮学校は、学校ではない。」


イ3月28日の街宜
3月28日の街宣においても、公園敷地を不法占拠しているとの社会的評価を低下させる虚偽の事実箭示が行われた。また、極めて悪質な侮辱的言辞も行われた。具体的に、その一部を抜粋すると、以下のようになる。


街宣の予告文において(下線は原告代理人による):
「在日無年金・朝鮮学校不法占拠を許さないデモ行進年金無加入なのに年金を寄こせという「在日無年金問題の解決をめざす会・京都」の不逞朝鮮人と公園を不法占拠している朝鮮学校に対して、それを正す行動に出た在特会・関西、主権回復を目指す会・関西を道理も無く排外差別主義者だと宣伝する筋の通らない全ての反日分子を許さない!」


 横断幕の記載内容:
上述の横断幕が、街宣開始直前、被告西村修平や被告中谷の演説を聴く街宣参加者からもよく見えるように、演説者の背景に掲げられており、その後の行進においても先頭数名がデモによる抗議対象を明示するために掲げていた。


街宮中の発言内容:
   「朝鮮学校は、学校ではありません。」「みなさん、日本の文部省の認
   可を受けていない、ただの任意団体、この任意団体に、なぜ我々が税
   金を払って、教科書無償、をする必要があるか。」「ゴキブリ、ウジ虫、
   朝鮮半島へ帰れ−。」「くやしいくやしい朝鮮人は、金正日のもとに、
   帰れ−。」「京都をキムチの匂いに、まみれさせてはいけない。」「ゴキ
   ブリ朝鮮人、とっとと失せろ−。」「日本に差別され、くやしい、くや
   しい朝鮮人は、一人残らず、朝鮮半島に帰れ−。」「は−い、京都府
   のみなさん、我々はこれまで50年間、朝鮮人に不当に奪い撮られた勧
   進橋児童公園をやっと日本の子どもたちに取り返すことができたので
   す。」「朝鮮学校は、自分たちの悪行を棚に上げ、ひたすら差別だ、涙
   の被害者面で事実をねじ曲げようと(した。こうしたやり方は)不逞
   朝鮮人伝統芸能である。…日本の子ども達の笑い声を奪った、卑劣、
   凶悪な朝鮮学校・・・。子どもを盾に犯罪行為を正当化する不逞鮮人を許
   さないぞ」


(2)原告の社会的信用の毀損を過小評価してはならないこと
原告が運営する本件学校は、長年にわたって地域において教育事業を営んできた教育機関としての高度の社会的信用を培ってきた。また、積極的に多文化共生事業に貢献するなど、地域の日本社会との交流の実績もこうした高度の社会的評価をさらに高めてきた。
こうした今日の社会的評価を形成するために必要となった努力の総量が、並大抵のものではなかったことは想像に難くない。原告や本件学校は、終戦直後の開校以来、社会に強く潜在する差別意識はもちろんのこと、日本政府からの直接の排斥、弾圧、敵視すらも受けながらも、数多くの学校関係者が確固たる信念と熱意のもと、在日朝鮮人の子どもたちのために惜しみない努力を結集してきたものである。そして、これに応えて数多くの児童たちが校内外で活躍し、そして卒業生となって日本社会と世界に貢献することによって、また、上述のとおり学校自身も積極的に日本社会に貢献する努力を行ってきた。多数の児童、関係者のこうした莫大な努力があったからこそ、原告の高い社会的評価は、何十年もの長期間をかけて、ようやく培うことができたものである(名誉形成に要した期間・.努力)。
一般に、初等教育機関にとって、高い社会的評価を維持することは、極めて重要な意義を有する。入学児童の募集に関していえば、反社会的な存在との偏見が広まり、蔑視の対象となってしまえば、民族教育を重視する児童の保護者でさえも入学をためらい、十分な児童数の確保ができないことになりかねない。また、確固たる社会的信用を維持することは、そこに通う児童らが健全な民族意識を培ううえでも大切である。児童らにとって、学校は、あらゆる面で生活の中心となっており強い帰属意識が醸成されている。自らが所属する学校が、一般社会から危険視され、教育内容にも疑念を抱かれているとなれば、当然、学校における教育効果を大きく減じる結果となる。こうした点で、原告の教育事業を運営にあたって社会的信用は極めて重要な意義を有している(名誉維持の必要性・重要性)。
他方で、残念ながら日本社会においては、今日においてもなお、在日朝鮮入に対する差別意識が広く存しているところ、被告らの誹謗中傷は、こうした差別意識を喚起・扇動し、利用するものであった。こうした表現行為と差別意識の相乗効果により、本件学校及び原告の名誉・信用は大きく損なわれる結果をもたらしてしまった。インターネット動画配信による極めて広範に本件街宜の差別的発言の拡散も、飛躍的にこうした作用を強化させている。この点に関して、北口末広近畿大学教授も、次のように指摘している。

     …特に社会的な偏見や差別意識に迎合する形で強調・歪曲され
     た情報は、正確でない情報でも容易に真実だと受け止められる。
     ネット上にはその種の情報が蔓延し偏見や差別意識が増幅して
     いる。被差別部落に対する偏見や差別意識があるもとでは差別
     的な情報の方が抵抗なく伝播しやすいのである。(「最近の差別
     事件の動向・特徴とその背景」大阪府人権協会HPに掲載。)

東京高判H21.1.30 ・ 判ク1309-91が、インターネットによる名誉毀損事件において指摘するとおり、「…全体的には信頼性が低いものと受け止められる情報であっても、それを閲覧する者としては、全く根も葉もない情報であると認識するとは限らないのであり、むしろその情報の中にも幾分かの真実が含まれているのではないかと考えるのが通常」であるなか、差別意識がこの誤信の拡散・再生産の作用に大きく影響することは明らかである。
こうした差別意識の拡散・扇動の作用もあり、本件で損なわれた名誉・社会的評価を原状に回復するには、想像を絶する困難を伴う(回復困難性)。
なお回復困難性に関して、インターネット言論の特殊性につき、上述の東京高判H21.1.30 ・ 判タ 1309-91は、以下のように述べる(同判断は最判H22.3.15 ・ 判タ1321-93により維持された)

     被害者が反論をしたとしても、これを被害者の名誉を毀損する
     内容の表現を閲覧した第三者が閲覧するとは限らないばかりか、
     その可能性が高いということもできない。加えて、被害者の反
     論に対し、加害者が再反論を加えることにより、被害者の名誉
     が一層毀損され、時にはそれがエスカレートしていくことも容
     易に予想されるところである。
     いずれにしても、インターネットの広範な普及に伴い、そこで
     の情報が、不特定の、文字どおり多数の者の閲覧に供されるこ
     とを考えると、その被害は時として深刻なものとなり得るので
     ある。

以上のとおり、被告らの行為によって深刻な社会的評価の毀損がもたらされたことは明らかであり、無形損害の評価にあたっても十分に反映させる必要がある。なお、被告らは、在日朝鮮人等を卑下する差別意識の扇動を目的として活動してきた団体であり、こうした相乗効果や回復困難性を熟知したうえで本件行為に及んでいる。従って、高額の賠償を課しても酷とはいえないし、むしろ被害の深刻さに照らし正義・公平の理念に適うというべきである。





本日のグルメレポート
大阪梅田の「ピッコロカレー」。口に含んだ瞬間、何これ?なんかいっぱい入っていると思わずうなる。少々お高いがその値打ちあり。ビーフカレーセットがお勧め。美味しゅうございました。(何のスパイス?かは知らないが筆者はこれを食うと眠たくなる)