京都朝鮮学校いやがらせ事件第二回口頭弁論傍聴記 1

朝も早くに京都朝鮮学校いやがらせ事件裁判に行ってきました。
前回の倍率が約2倍の狭き門だった。運よく傍聴する事ができたが今回はどうだろう。
徳島での徳島県教組襲撃事件の刑事裁判は抽選に外れたのはかなりショックで、泣きながら徳島ラーメンを食ったのはつい先日の事。
外れたら泣きながら鴨川で寄り添うカップルに石を投げるか、非国民でいいから目の前の御所を焼き討ちしてやると意味不明な悲壮な思いで裁判所に着く。
9時過ぎに着いて見ると朝鮮学校側の支援者約50名がいて、在特会側が2名。いやまてよ、見た事もない女の人で間違ってそちらにいただけかもしれない。見渡しても在特会側の知った顔は見当たらない。そうこうしているうちに裁判所職員より無抽選の発表があり驚いた。よかった。事件を起こさなくてよくなった。
結局、在特会側は見当たらず傍聴席は支援者で埋め尽くされる。報道関係者は5名程で裁判席では朝鮮学校側弁護士が10名。そして反対側の在特会は誰もいない。やる気あんのかよ。
おかしいなと思いながら開廷予定の10時になっても在特側の席には誰もこない。
さすがに10分を過ぎると変な空気になる。おいおいこのまま終わり?何それと。
裁判所職員があっちいったりこっちいったりと妙に慌ただしく何かの調整をしているのはわかったが。
そうすると法廷に飛び込むように、在特会が選任したという徳永弁護士が登場。
徳永弁護士は息せき切って法廷の席に着くや、裁判官がすかさず登場し開廷される。
まず裁判長が発した言葉は「お待ちしておりました」。待たされた裁判長の徳永弁護士への皮肉である。裁判長は「次回は頼みますよ」と続けて呼びかけるが徳永弁護士は書面確認で忙しいのか目も合わせず返答もない。うわっ。失礼な。
この徳永弁護士は今まで関わった裁判でも遅刻してきたという話は聞いてあったが、噂どおりだった。被告連中もナニだが選任された弁護士も大概な印象をもった。
裁判長はそのまま準備書面の確認に入り、徳永弁護士に弁護側の書面は伝わっているかの確認がなされまた在特会側の被告人答弁書の確認がなされた。この時に徳永弁護士より八木氏美久氏等の被告人の名前を確認する場面があったが、一人の名前だけがゴニュゴニュと聞き取れない個所があった。前後の言葉は明瞭に聞こえたのにかかわらずその箇所だけ不自然に濁していた。あれは意図的に言葉を濁したふうに感じた。その聞き取れない名前こそが桜井誠の本名ではなかったろうか。

続けて、原告側より出された準備書面の口頭説明が行われた。
原告側より提出された準備書面は第一から第四まであり、それぞれの説明をふんふんと聞いていたが、後の報告集会でもらった準備書面要旨を見るとすごいのが出てきたと思った。
本来なら概略紹介で留めるのが楽なのだが、それではあまりにもったいないし、拙い概略を載せるよりも、報告集会で頂いたものの項目の箇条書きだけでもそのすごさがわかってもらえるのではないだろうか。
以下、項目箇条書き。


 はじめに

第1 民族教育(実施)権の意義
1 民族教育権、民族教育実施権とは
2 民族教育の法的根拠
憲法上の保障
② 国際人権上の保障
ア 「教育に対する権利」としての保障
イ マイノリティの権利としての民族教育
ウ 小括
③ 学校事業主体たる原告の民族教育実施権
3 民族教育が、個人の人格的生存に不可欠であること。
① 民族教育の重要性 〜 一般論として
ア はじめに
イ 日本学校における民族教育事業
ウ 在外教育施設による日本の民族教育事業
エ 民族教育事業の意義
オ 日本社会における在日外国人による民族教育事業の意義
② 民族教育の重要性 〜 在日朝鮮人における特別の重要性
ア 朝鮮半島における戦前の皇民化政策(言語と氏名の剥奪)
  ァ 第一次朝鮮教育令
  ィ 第二次朝鮮教育令
  ゥ 第三次朝鮮教育令
  ェ 創始改名
イ 戦前の日本における在日朝鮮人の形成と状況
  ァ 日本における在日人口の形成
  ィ 皇民化の過程
ウ 戦後の朝鮮学校を巡る状況
  ァ 終戦後の在日の状況
 ィ 朝鮮学校の建設
 ゥ 日本政府の弾圧
 ェ サンフランシスコ講和条約以降
エ 日本における朝鮮学校の意義
 ァ 日本の学校における在日朝鮮人としてのアイデンティティへの脅威
 ィ 在日朝鮮人アイデンティティの危機について(体験談)
 ゥ 上記事例の評価
 ェ 李月順氏の分析
 ォ 小括
オ 「かくれたカリキュラム」と民族的アイデンティティの確立
 ァ 顕在化されているカリキュラムの作用
 ィ 「かくされたカリキュラムの作用
 ゥ 朝鮮学校における「かくれたカリキュラム」の重要性
 ェ 日本の公教育における「かくれたカリキュラム」
カ 小括
4 本件学校における民族教育の実態
①  教育目標
②  カリキュラム
③  児童らの一日
④  児童らが習得すること
⑤  近隣住民・日本社会との親交
5 小括

第2 原告の損害(有形損害)
1 有形損害(財産的損害)
① 具体的な金銭支出
ァ 平成21年12月4日の街宣活動に関するもの
ィ 平成22年1月14日の街宣活動に関するもの
ゥ 小括
② 対応に要した時間・労働等
ァ 平成21年12月4日の街宣活動に関するもの
ィ 平成22年1月14日の街宣活動に関するもの
ゥ 平成22年3月28日の街宣活動に関するもの
ェ その他
ォ 小括
2 財産的損害ではあるが金額に評価しつくせないもの

第3 原告の損害(無形損害)
1 はじめに
① 「無形損害」判断要素
② 法人の「無形損害」と自然人の「慰謝料」がほぼ同義と考えられていること
③ 加害者側の事情
④ 原告の無形損害の要素
2 原告及び本件学校の名誉・社会的評価が毀損されたこと
① はじめに
ァ 発言内容「公園を50年も不法占拠している」「日本国民が公園を使えない」
ィ 発言内容「この学校の土地も不法占拠だ」「我々の先祖の土地を奪った、戦争中、男手がいないから、女の人をレイプして虐殺して奪ったのがこの土地」「ここも(学校敷地内をさして)もともと日本人の土地や。お前らが戦後奪ったんちゃうんかこら!」「これはね、侵略行為なんですよ、北朝鮮による」「戦後焼け野原なった日本につけこんで、民族学校、民族教育闘争、こういった形で、至る所、至る日本中、至るとこで土地の収奪が行われている」
ゥ 発言内容「ここ北朝鮮のスパイの養成機関」
ェ 発言内容「スパイの子ども」「こいつら密入国の子孫」「犯罪者に教育された子ども」
ォ 発言内容「ここは横田めぐみさんをはじめ、日本人を拉致した朝鮮総連」「朝鮮ヤクザ」
ヵ その他の侮蔑的発言について
 イ 1月14日の街宣
 ウ 3月28日の街宣
② 原告の社会的信用の毀損を過小評価してはならないこと
3 原告の教育事業に対する支障について
① 差別攻撃が与える民族教育への影響
② 被告らの行為の特殊性
③ 人種差別を動機とする反復的犯罪行為(ヘイトクライム)の強い影響力 ホール教授 ポーツマス大学)等による分析
④ 本件学校が教育事業を維持できていることの評価
4 児童ら、父母ら、教職員、法人構成員の精神的苦痛の評価

第4 弁護士費用について
1 はじめに
2 あるべき弁護士費用の設定基準
3 小括

第5 まとめ


以上が原告第一準備書面である。
箇条書きの内容については、法廷審理の中で表されると思うが、歴史、法の観点からも民族差別に対する明確な論理が展開されていると思われる。これはもはや学術論文に比するものではないだろうか。
要旨としては、法的観点からは民族教育権や民族教育を実施する自由について、憲法26条。13条の他、世界人権宣言、26条1項、社会権規約13条の1項、子どもの権利条約28条1項など国際人権条約を掲げ法的にも守られている項から始まり、朝鮮学校の歴史的経緯にふれられ、歴史的にも法的にも民族教育は認められるべきものでありその正当性を訴えている。
その上で特に強調したいのは、民族教育の必然性を説いている点だ。法的にも認められ護られるべき民族教育の権利を堂々と主張し司法への訴えとしている。この点がこの準備書面の画期的なとこであり核であると思う。最も司法に理解してもらいたいとこだろう。
また民族差別による有形の損害はもちろん、無形の損害評価への理解を求めている。個人的には恐らく弁護団の意思は賠償額の成果を求めて裁判過程で重点がおかれると予想する。
そのために在特会側の行った侮蔑的発言と行動をを丹念に取り上げ反論していき、児童、父兄らの負わされた心の傷に対しての損害評価は、このヘイトクライムに鈍重な社会への指標とさせるという弁護団の強い思いを感じた。私の知っている限りこのような、司法の場でヘイトクライムに対するここまでの真っ向勝負は初めてではないだろうか。まだ残りの三書面があるが、この準備書面一つをとっても弁護団の凄まじい気迫というか迫力を感じた。