朝鮮学校嫌がらせ事件裁判判決 理由1

(最初に。判決文に出てくる被告人、証人も含めて名前がでてくるところは全て○○にしております。)



理由



第1 認定事実

前記の前提草案並びに証拠(甲1ないし11,25,29,30,32ないし46,48ないし55, 57ないし83,89,95,99,106ないし113,115,117ないし145,151ないし153,158ないしl66,168, 169,174,177ないし179,181,187,乙1,4ないし10, 20ないし23, 28ないし31,34, 39,40,42ないし48,53ないし56,100,118,119,129,132ないし151, 158, 159, 166, 189,被告○○,被告○○,被告○○,被告○○,被告○○,被告在特会会長〇〇. 被告○○,証人〇〇,証人〇〇及び証人〇〇及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。


1 朝鮮学校について

(1) 全国の朝鮮学校は,各都道府県知事により認可された学校法人である朝鮮学園が設置,運営している。在日朝鮮人の民族教育を行うための学校としては,在日本大韓民国民団が関与する韓国系の学校もあるが朝鮮学校は,朝鮮総連が関与する北朝鮮系の学校である。

(2) 朝鮮学校は,学校教育法134条にいう「各種学校」として位置づけられており,現在,その数は全国に約120校,生徒数は約1万2000人である。

朝鮮学校の教育体系は,幼稚班(1年ないし3年制), 初級部(6年制),中級部(3年制),高級部(3年制),朝鮮大学(2年ないし4年制)及び朝鮮大学研究員(大学院課程)であり,朝鮮大学の卒業生がまた朝鮮学校の教師になるという仕組を形成している。朝鮮学校の入学の基本的条件は北朝鮮籍在日朝鮮人であるか,父母のうちいずれかが韓国人又は朝鮮人であることであり,入学者の中には,朝鮮籍韓国籍のほか,日本国籍を有している者もいる。

朝鮮学校では,民族衣装を制服にし,学校内の日常用語として朝鮮語だけを使用するようにするなど,徹底した民族教育が行われている。

(3) 朝鮮学校は,上記のように,学校教育法上の各種学校であり,国庫補助はなく,地方自治体から教育補助金の交付を受けている場合があるに過ぎないため,多くの朝鮮学校では,生徒の母親たちによって組織されるオモニ会や,父親たちによって組織されるアボジ会といったボランティア組織によって学校運営の補助が行われている。

(4) 原告は,昭和28年に学校法人として認可された。本件学校は,戦後間もなく,日本の公立学校とは教育体系を異にする自主学校として設置された京都第一朝鮮人小学校を前身とするものであり,昭和35年同小学校が京都市南区上鳥羽勧進橋の鉄筋コンクリートの校舎に移転した上,その名称を改めたものである。


2 被告在特会について

(1) 被告在特会は,〇〇によって平成18年12月2日に設立された団体であり,「在日問題を広く一般に提起し,在日を特権的に扱う, いわゆる在日特権を無くすこと」を目的としている。被告在特会が是正すべきとして問題視する在日朝鮮人の「特権」とは,主に,在日朝鮮人に対する特別永住資格通名制度等を指している。

被告在特会は,「七つの約束」と称する綱領を有しており,その内容は下記のとおりである。

1在日による差別を振りかざしての特権要求を在特会は断じて許しません。

2 公式サイトの拡充, 各地での講演会開催などを様々な媒体を通じて在日問題の周知を積極的に行っていきます。

3 各所からの講演要請があれば在特会は可能な限り応じ,集会の規模を問わず講師の派遣を行います。

4「在日特権に断固反対」「在日問題を次の世代に引き継がせない」意思表示として在特会への会員登録を広く勧めていきます。

5当面の目標を登録会員数一万人に定め,目標に達し次第,警察当局や法務当局,各地方自治体,各政治家への在日問題解決の請願を開始します。

6 在日側からの希望があれば,放送・出版など様々なメディアにおいて公開討論に応じます。

7 不逞在日の犯罪行為に苦しむ各地の実態を知らしめ,その救済を在特会は目指していきます。

(2) 被告在特会の会則(以下「会則」という。)には,要旨,下記のような規定がある(甲1)。

1 被告在特会の会員は,会員,メール会員, 協賛会員及び協賛サイトの4種類により構成されており,会員及びメール会員が総会議決権を有し,会員が執行役員の被選挙権を有する(会則6条)。

2 被告在特会は,機関として,執行役員(会長,副会長,事務局長等),執行役員会,総会及び幹事を備えており,執行役員は総会での承認により選出される(会則7ないし10条)。

3 被告在特会の総会(定期総会及び臨時総会)は,会長が招集し,各議案(役員の承認,事業報告及び計画,予算及び決算, 規約の改廃並びにその他の事項)については,議決権を保有する出席者の2分のl以上の賛成をもって決する(会則11条)。

4 被告在特会の運営は寄付金を基礎として行い, 被告在特会が事業収入を得た場合には,これも運営資金に含めることとする。また,会計年度は4月1日から翌年3月31日までとする(会則16ないし20条)。

5 会長は,会計報告を総会に対して提出し,総会の承認を求める(会則22条) 。

6 会員について,会員としての品性を欠く言動など,被告在特会の運営に著しい支障をきたし又は被告在特会の会員としてふさわしくないと認められるものがある場合には,この会員を,除名その他の処分に付することができる。この処分は,会長が職権によってなし得るほか,会員及びメール会員の2分のl以上から処分の要請があった場合には執行役員会の議決,総会で議案として提案された場合は出席者の2分のl以上の賛成によって行うことができる(会則25条)。

(3) 被告在特会の会員になるためには,被告在特会のウェブサイトから,登録用書式に従って登録するだけでよく,入会費又は会費は不要である。被告在特会の会員数は,設立当初は約500名程度であったが平成24年頃には,1万2000人を超えた。

被告在特会は, 平成24年時点で,全国に37の支部を有しており,会の活動は, 基本的に支部に任されているが,会長である○○が直接指示を出すこともある。

被告○○は被告在特会の副会長であるが,同時に執行役員として地方支部運営の任命や解任を行う権限を有していた。

会則11条の総会は実際に開催されており,そこで会のおおまかな方針が決せられる。定期総会には,200名程度の会員が出席し,その決議は拍手によって行われる。

また,会則25条の除名処分は,これまでに3回行われたことがある。

(4) 被告在特会は,会員からの寄付を財源としており,被告在特会名義で管理している預金口座への振込の方法のほか,500円から10万円までのクレジット決済の方法による寄付を募っている。平成22年下半期には,被告在特会への寄付は,振込によるものが651件,クレジット決済によるものが429件あり,これまでの寄付金の中には1回の寄付が1000万円を超える多額のものもあった。

(5) 被告在特会は,設立当初から,単独で,あるいは他の保守系市民団体と共同して,全国各地で頻繁に「反日的」とみなした団体等を対象として,抗議活動や示威活動を行っており,その活動の様子を撮影した映像を公開し,流布することで会員数を増加させてきた。

とりわけ,本件映像公開により,本件示威活動の様子が映像の形で多くの人の目にとまったことで,劇的に会員数が増加した。


3 主権会について

(1) 主権会は,被告○○よって平成19年5月に設立された団体であり,その設立趣旨文には,「行動の方針」として,下記のような記載がある。これは被告○○が書いたものである。

(1)「支那中共,朝鮮に阿る売国経済人をはじめ,我が国の国家利益を貶める反日・虐日勢力など靖国の英霊を貶める支那中共代理人勢力と戦う」

(2) 主権会の会員になるためには,二人以上の紹介を受けた上,被告○○の決裁を経なければならない。主権会の活動資金は, 基本的に被告○○のポケットマネーや寄付金によって賄われている。

(3) 主権会は,設立以来支部をもたなかったが,平成21年10月16日,唯一の支部である関西支部が発足した。被告○○は, 関西支部支部長に被告○○を, 事務局長に〇〇被告を, 幹事に被告○○を, それぞれ任命した。被告○○は,これらの者と拉致問題等に関する抗議活動で知り合い,主権会関西支部としての活動を持ちかけたものであった。

被告○○は,関西支部に対しては,被告○○の指示を了解しているという前提で,具体的な活動内容を任せることとしていた。


4 「チーム関西」について

(1) 被告○○は,平成19年頃から○○や被告○○と面識があり, 関西地域における保守系市民運動に積極的に関わってきた。平成21年4月頃には,○○は被告在特会の関西支部長にならないかとの打診を受けたが, 支部長には被告○○を推して,自らは,同年7月1日付けで,被告在特会関西支部の会計に任命された。

被告○○は,平成20年9月頃, 被告在特会のメール会員となったが,同年12月頃, 京都で行われた抗議活動を通じて被告○○と知り合い, 被告○○の推薦もあって 平成21年7月1日付けで,被告在特会の関西支部長に任命された。

被告○○は, 平成18年頃, 被告在特会のメール会員となったが, その頃被告○○と知り合い, 主に主権会の運動に携わってきた。

被告○○は,平成20年夏頃,被告在特会のメール会員となった。

(2) 被告○○, 被告○○, 被告○○, 及び被告○○は, 平成20年頃には,抗議活動や示威活動を通じて知り合いとなり,共同して, 同人らが「反日的」とみなした団体等を対象として抗議活動を行うようになった(この4人を中心とするグループは,示威活動を契機に,自然発性的に「チーム関西」などと呼ばれるようになった。)。

被告○○は, 被告在特会の会員でも主権会の会員でもなかったが,平成21年5月頃から,被告○○が抗議活動を行っている場所に赴き, その様子を自発的にビデオカメラで撮影しその映像を公開していた。被告○○は,被告○○の撮影技術が優れていたことから,自分たちの活動を撮影するよう被告○○に依頼するようになった。被告○○も,被告○○の依頼を承諾し, 同年夏頃以降,被告○○の抗議活動に毎回同行し,その様子を撮影するようになった。被告○○が撮影した映像は手ぶれがなく, 見やすかったことから,被告○○らから「○○○」という愛称で呼ばれるようになった。

(3) 被告○○は,被告在特会の会員でも主権会の会員でもなかったが,保守系市民運動を通じて,平成20年頃に被告○○と, 平成21年頃に被告○○とそれぞれ知り合った。また, 遅くとも示威活動2までには,被告○○とも面識があった。

被告○○は, 「ミクシイ 」内 における被告○○を応援するコミュニティ○○ファンクラブ)の管理人でもあった。


5 本件学校による本件公園の使用

(1)本件学校は, 昭和35年京都市南区上鳥羽勧進橋に移転したが, 自前の校庭がなかったため, 体育の授業や部活動, 運動会,式典の際には,隣接する本件公園を校庭代わりに使用してきた。

本件公園の管理者である京都市は,平成21年5月頃までは,本件学校による本件公園の使用態様について改善を申し入れたことはなかったし,本件学校も, 本件公園の使用に際して届出や許可申請をしたことはなかった。

(2) 阪神高速道路株式会社は,平成21年2月,本件公園の一部を施工区域とする阪神高速道路の延伸工事に着手した。

京都市緑地管埋課職員である○○(以下○○という)は,上記着工のころ, 阪神高速道路株式会社の関係者や本件学校長の校長とともに本件公園を見分したが,その際,サッカーゴール2台,朝礼台及びスピーカーが設置されていることを確認し, 校長から, これらの物件は本件学校の所有物であるとの説明を受けた。

(3) 本件公園は,都市公園法の規制が適用される公の施設であり, サッカーゴール等の物件を常時設置してこれを占用することは, 京都市長の許可がない限り違法であり(都市公園法6条1項), 違反者には6月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられ得るところ(同法38条1号),○○はこれらの物件の設置が厳密には都市公園法違反であると認識したことから,平成21年2月ころ,本件公園から上記各物件を移動するよう原告を指導した。

(4) 平成21年5月頃から, 京都市に対しては,複数の近隣住民から, 本件学校の本件公園の使用に関する苦情が寄せられ始めた。その内容は, 本件学校が本件公園を校庭として使用していることや,住民が使用しようとした際に本件学校関係者と言い争いになったこと等を訴えるものであった。

これを受けて○○は,本件学校に対し,上記物件を撤去するよう指導した。○○校長はこれまでの経緯から,これまで通りの本件学校による公園使用を黙認することを求め,すぐには撤去に応じなかったが,その後も○○から同様の指導がされたので,本件学校は,同年7月中に,平成22年1月末までに上記物件を撤去することを約束した。

(5) 本件学校は,その後,平成21年8月8日に京都市から許可を得ることなく本件公園で祭りを行い,その際の喧騒や違法駐車,火気を使用したことについて近隣住民から京都市に苦情が寄せられた。○○は,これを受けて,○○校長に対し,今後はこのような催しについては,本件公園の使用許可を得るよう伝え,また, 火気を使わないよう指導した。

しかし,本件学校は,同年10月4日にも京都市から許可を得ることなく, 本件公園で運動会を行い,これに対しても,違法駐車や放送の音量,また酒類の販売や飲酒がされていたことについて近隣住民から苦情が寄せられた。

○○は,その後,同年11月にも本件公園で本件学校のための即売会,(資金を集めるための持ち寄り物品の即売会 バザー)を予定していることを知り,本件学校側に対し,近隣住民の理解が得られるような本件公園の使用にとどめるよう指導した。

そこで,上記即売会では,オモニ会の会員など父兄により交通整理が行われ,また,公園内での飲酒,喫煙,火気使用をしないよう呼びかけも行われた。


6 示威活動1の経緯

(1)平成21年11月13日,被告在特会の関西支部宛てに,本件学校の近隣住民と称する者から,本件学校が本件公園を校庭として使用し,無許可で即売会も行っており,近隣住民が迷惑しているとのメールが寄せられた。

被告○○は,被告○○, 被告○○及び被告○○と協議し,同月18日,上記メールに対し「これから色々確認した上で, 12月初めに攻撃しようと考えております」と返信した。

(2) 被告○○及び被告○○は,平成21年11月19日,本件公園に下見に赴き,サッカーゴール2台,スピーカー及び朝礼台が設置されていることを確認した。また,被告○○は,阪神高速道路の工事現場の警備員から,サッカーゴールは本件学校の児童が使っていること,本件学校が本件公園を校庭として使用しているとことを聞き「これは叩き出しましょうね, 近いうちに。12月初旬に叩き出して」などと発言した。

両名は,その後,伏見区役所に赴き,本件公園について尋ねると○○が担当者であること,○○は同月24日まで出勤しないこと,本件公園の使用については本件学校との話合いが継続中であることを知らされた。被告○○は, 両名の伏見区役所訪問の様子をビデオカメラで撮影し, その映像を「京都朝鮮学校が児童公園を不法占拠【主権回複/在特会関西】」というタイトルを付して公開した。

被告○○は,上記のような下調べを終え「朝鮮人を糾弾する格好のネタを見つけた」と考え,本件学校を糾弾してその様子を動画サイトに流すことで,自分たちの活動の輸を広げることができると考えた。

被告○○と被告○○は,伏見区役所からの帰り道,同年12月4日午後1時から本件学校に対する抗議活動を行うことを決めた。平日を抗議活動の日と決めたのは,授業中の平日を見計らって抗議活動を行わなければ,本件学校に職員がいないために意味がないと考えたからであった。

被告○○は, その後,京都市緑地担当課に電話し,同日に本件公園で集会をするので,畳2畳分くらいの場所を使用したいし,その際は小さなマイクも一つ使いたいと申し入れたところ,京都市緑地担当課の職員は,その程度の使用であれば許可は必要ないと述べた。被告○○は,このやり取りの際,集会の目的に関連することは一切述べなかった。

(3) 被告○○は,翌日の平成21年11月20日,被告○○及び被告○○にも下見の結果を話し,同年12月4日を決行日とすることを伝えた。

被告○○は,同年11月21日には,朝鮮総連京都本部前での示威活動を行い,その演説時に,本件公園のサッカーゴールを本件学校に「放り込む」と予告した。

被告○○は同月24日には,「いち京都市民の○○」とだけ名乗って○○に電話をして本件学校による本体公園の使用について事情を聞いたととろ, ○○から,本件学校は,京都市からの指導を受けて,平成22年の1月か2月にはサッカーゴール等を本件公園から撤去する約束をしているとの回答を受けたが, 被告○○と相談し,これにかかわらず抗議活動を決行することに決めた。

(4) 当日の段取りは,主に被告○○と被告○○との問で決められた。被告○○は,本件学校による抵抗を予想していたため,不慣れな者は参加させず,普段から頻繁に被告在特会や主権会の活動に参加する者だけを参加させることとした。その中には,被告○○, 被告○○及び被告○○ら以外にも,普段の活動に同行している被告○○も含まれていた。

被告○○と被告○○その他の参加予定者の一部(ここには,被告○○及び被告○○は含まれていない。)は,「ミクシィ」の掲示板を用い,参加者の待ち合わせや当日の手順などを話し合ったが,被告○○は 平成21年12月3日,「明日の段取り」 という題名で,下記の書き込みを行った。なお,計画前の段階では,スピーカーの撤去については明示的に打ち合わせがされることはなかった。

1 珍しく紳士的に朝鮮学校を訪問し, 公園に設置されている学校の私物を撤去してあげるので門を開けて下さい」と下手に出る。

2 ★開けてくれた場合→ボランティア精神で陰徳を積む為に学校内に私物を傷がつかないようにやさしく運び込んであげる。

★拒否された場合→多重人格者(←これ大事)のごとく変貌し,狂いだしマイク街宣を始める。

3 まずは重量が軽い朝礼台を学校の前まで持って行き,「門を開けろ!」と大合唱する。

4 門を開けない場合,朝礼台を学校内に放り込む。

後は,明日の自分の機嫌等,通報等で駆けつけて来ると思われる警察の対応により決めることとする。

(5) ○○校長は,遅くとも平成21年11月24日には,被告○○が伏見区役所を訪問した際の映像を確認し、被告在特会の会員が本件学校に押しかけて抗議行動を行うであろうことを察知した。

○○校長及び当時の本件学校の教務主任であった○○(以下「主任」という。)並びにその他の教職員数名は,同月25日, 対策会議を開催し,被告在特会が実際にやって来た場合の役割分担等の取り決めを行い,また被告在特会の挑発には絶対に乗らないこと,学校の門を閉めて中に入れないこと,対応は警察に任せること, 父母には知らせないでおくこと等の方針も決められた。

○○校長及び○○主任は, 同年12月4日には,町内会長や京都市南区副区長に対しても協力を要請した。

(6) 平成21年12月4日に行われた示威活動1の様子は, 以下のようなものであった。

ア 被告○○,被告○○,被告○○,被告○○,被告○○及びその他6人の参加者は,午後1時頃に本件公園に集合すると, 本件学校の南門前に向かった。被告○○は, 同日の午前中に電気工事の仕事を行っていたが,本件公園のスピーカーの配線を切断し,撤去するつもりであったので,仕事着を着たままであり, 仕事道具も持参していた。

参加者らは,「主権回復を目指す会」と記された幟を掲げていたが, この幟は被告○○が作成した幟の一つで,被告○○が, 被告○○対し, あらかじめ主権会の関西支部として活動する際に使用することを許諾していたものであった。

被告○○は,この集合のときから示威活動1が終了するまで,その一部始終をビデオカメラで撮影した。

イ 被告○○は,まず,門の中にいた本件学校の校長や職員に対し, 「サッカーゴールとか朝礼台。ね, どけて。どけて。近所から苦情でとんねん。門開けて,運んだるわ」と切り出した。被告○○がこのように切り出したのは, 被告○○が撮影している手前,最初に交渉しようとした形をとる必要があると思っていたからであった。

本件学校側がこれに応じないでいると, 被告○○, 被告○○及び被告○○, 並びに他の参加者の一部は,拡声器を用い,又は大声で, 順次,前記前提事実3(5) のとおりの発言を行い,これに続き,他の参加者らも「おー」「出ていけー」「叩き山せー」「門をあけろー」などと一斉に大声を合わせて気勢を上げた。参加者の中には, 本件学校の関係者に対し「お前らウンコでも食っとけ!半島帰って」などと発言する者もあった。

被告○○は,被告○○が撮影する映像の視聴者を意識して,本件学校に対する敵意を見せ,口汚く罵り,威嚇しようという意図を有していた。

ウ 被告○○は, 示威活動の開始から約五分が経過した頃,「朝礼台おくりこみましょか, そろそろ, さあみなさん軍手をはめて撤去しましょう」と参加者らに支持を出し, これを受けて,参加者らは,本件公園内のサッカーゴールを倒し, また,朝礼台を本件学校の南門前まで運んで門に立てかけた。また,被告○○は,本件公園のバックネットに自ら持参した梯子を設置し,スピーカーの電源コードを切断した上取り外し,南門前まで運んだ。

エ 被告○○は,本件学校の関係者を指して「○○さん!○○さん!こいつ『それがどないしてん』ぬかしたよ」「こいつ,こいつ。○○さん」などと,被告○○に撮影を促した。

オ 被告○○は,被告○○が公開した映像を批判的な立場の者も閲覧することから,被告○○らが勝利した形で示威活動を終わりたいと考えていたところ,本件学校内から弁護士が出てきたため,同弁護士に対し「私達の会長と公開討論会受けてもらえますか」「あなたの身分で我々のあのトップとしゃべれるんですか」などと○○との公開討論会に応じるよう迫り,示威活動を終えた。示威活動の開始から終了までに経過した時間は, 約50分であった。

(7) 平成21年12月4日の本件学校の様子は,以下のようなものであった。

ア 午後l時頃,本件学校では,幼稚班を除いたほぼ全ての児童が本件学校内におり,低学年(1年生から3年生)は昼休み中であり,高学年(4年から6年生)は3階の講堂において京都朝鮮第二初級学校,京都朝鮮第三初級学校及び滋賀朝鮮初級学校の高学年の児童たちと共に交流会を行っていた。

イ 示威活動1が始まると, 低学年の教室においては,教職員が教室の窓とカーテンを閉め児童に教室から出ないように指示をしたが,示威活動1の拡声器による怒号を防ぐことはできず、3学年の教室では,児童のほとんどが恐怖を感じて一斉に泣き出した。

高学年の教室では,教職員が, 交流会で流されていた音楽の音量を上げて,児童に示威活動1の怒号を聞かせないように努めた。

ウ 本件学校は,示威活動1が終了した後も混乱状態にあり,この日は,児童たちの安全確保等のため,下校時刻を1時間ほど遅らせた。

エ 下校時刻後,本件学校では,今後の対応について協議するために全教職員による会議が行われ,その結果,示威活動1が行われたことについて保護者に説明を行うこと,児童たちの心理面に気を遣うこと,まずは児童の安全を最優先することが確認された。

(8) 示威活動1を終えて,被告○○は,被告在特会のウェブサイトにその報告文を掲載した。

また,被告○○は,示威活動1の一部始終を撮影した映像に「12月4日京都児童公園を無断で校庭として使う朝鮮学校から奪還」というタイトルと軽快なBGMを付して,動画サイトに投稿し,映像を公開した(映像公開1)。この映像には1週間で10万件を超えるアクセス数があった。

(9) 示威活動1については, 新聞等のメディアの中にもこれを報道したものがあったが,それらの報道は,被告○○らの行為を「人種差別」として非難するものであった。


7 示威活動1後の本件学校の対応

本件学校では,示威活動1の後, 保護者説明会を開き,経緯を説明するとともに,何かあった場合にすぐに保護者に連絡が取れるよう, 保護者への連絡網を整備した。

本件学校は,学校周辺での見守りも強化することにした。従前も児童の登校時刻においては南門に1名の教職員が配置されていたが,示威活動1の後は,北門にも教職員を配置して子どもたちを見守ることにした。とりわけ,示威活動1から2学期が終了する平成21年12月24日までは,南門及び北門にそれぞれ複数の教職員を配置することとされた。年末年始の冬休み中も,保護者らの協力を得て,1日に2時間程度本件学校の周囲の見回りを行い,平成22年1月8日に新学期が始まると,児童の登校時刻における見守りに加え,下校時刻にも3名の教職員が児童に付き添って下校させるようになった。

同月14日からは, アボジ会やオモニ会の会員も,当番表を作成し,交替で,児童の登校時の見守りと下校時の付添いに協力するようになった。このような保護者による協力は,同年7月まで続けられた。


8 示威活動2の経緯

(1)被告○○は,被告○○がアップロードした示威活動1の映像を見て,すぐに被告○○と連絡を取り「○○くん, すぐにデモをやろう」「勧進橋公園でこの問題についてのデモをやろう」と持ちかけた。また,被告○○は,被告○○に対しては,目的は正しいが手段については問題があると指摘し,今後は事前に相談をするように指示した。

その後,被告○○は,被告○○らと相談した上で,デモの決行日を平成22年1月14日とした。このデモについては,前提事実4のとおり,同月7日に被告在特会のウェブサイトにおいて予告がされたほか,主権会のウェブサイトにおいてもこれと同内容の予告がされ,参加の呼びかけが行われた。上記予告の文章は,被告○○が作成し,被告○○が監修したものであった。

(2) 被告○○は,上記の予告を「2ちゃんねる」や「ミクシイ」内の掲示板を通じて知り,示威活動2に参加することにした。

(3) 上記の予告を受けて, ○○校長及び○○主任は協議を行い,示威活動の様子を児童の目に触れさせないため,当日の午後は課外授業を行わざるを得ないと結論し,「1月14日の課外授業について」と題する保護者向けの連絡文書を作成し,平成22年1月8日に開催された保護者会でその旨の説明を行った。

本件学校の教職員らは,手分けして課外授業先の決定や観光バスの傭車手続を行い,最終的に,高学年は大阪府吹田市の国立民俗学博物館で,低学年は滋賀県草津市琵琶湖博物館でそれぞれ課外授業を行うことになり,幼稚班は京都朝鮮第二初級学校で課外保育をすることになった。また,同月14日の午後に本来予定されていた授業は,後日の予定に組み入れて行うこととされた。

(4) 平成22年1月14日に行われた示威活動2の様子は,以下のようなものであった。

ア 被告○○は,示威活動2に先立ち,京都府南警察署に対し,本件学校前の道路の使用につき,時間,進路,参加人数,趣旨(本件学校による本件公園の不法占拠を許さないというもの)及び責任者を明らかにして申請を行い,同警察署から使用許可を得ていた。

同警察署は, 当日,約10台の警察車両,約100名の警官を出動させ,本件学校の周囲を警備していた。

イ 被告○○, 被告○○, 被告○○, 被告○○, 被告○○, 被告○○及び被告○○, 並びに参加者ら合計約30名は, 午後2時20分頃,本件公園に集合し,まず,被告○○,被告○○らによる演説が行われた。

被告○○は,集合時から示威活動終了までの一部始終をビデオカメラで撮影した。

ウ 参加者は,その後,デモ隊を組んで本件公園を出発し,事前の申請のとおり,まず,本件学校の校舎のすぐ横にある南北に通る狭い道路を北進し,久世橋通りを東進し,国道24号続を北進し,十条通りを西進し,油小路通りを南進し,京都市道南緯6号線(原文ママ)を東進し,鳥丸通りを北進し, 50メートルほど進んだところで流れ解散した。

この間,被告○○,被告○○及び被告○○並びに参加者の一部は,拡声器を用いて, 前記前提事実5(2) のとおりの発言を行い,これに続いて他の参加者も「たたき出せー」「出て行けー」「ぶち殺せー」と一斉に大声を合わせて気勢を上げた。

被告○○は,本件街宣車に乗り込み,拡声器を用いて,被告○○が書いたメモに基づき「我々は在日特権を許さない市民の会主権回復を目指す会関西の,朝鮮学校による侵略を許さないぞ京都デモの一行であります。生意気に不法占拠した上鳥羽勧進橋にふんぞり返っている朝鮮学校は,約50年わたり勧進橋児童公園を不法占拠していました。ここで平成21年12月4日,在日特権を許さない市民の会主権回復を目指す会関西支部と合同で勧進橋児童公園奪還作戦を敢行いたしました」と読みあげた上で,(在日朝鮮人を) 「必ず日本からたたき出してやる」との発言や,北朝鮮と関連づけてパチンコ屋を糾弾する内容の発言を行った。

また,デモの先頭に立っていた3名の参加者は、「朝鮮学校の公園占拠を許すな!不法占拠を『学校襲撃』にすり替える朝鮮人の下劣, 差別迫害されている朝鮮人は本国へ帰れ!」と記載された横断幕を掲げていた。

エ 被告○○は,デモ隊の解散後,本件公園に移動して, テレビ局のインタビューに応えた。その中で被告○○は,示威活動1について, 本件学校が50年間にわたって本件公園を不法占拠しており,京都市も何ら対処しなかったため,朝礼台とスピーカーを撤去したと説明した。

また,デモ隊の解散後も, 被告○○被告○○被告○○ら参加者のうち一部は,解散地点付近において示威活動を続けたため,最終的に示威活動が全て終了したのは午後4時半頃になった。

(5) 平成22年1月14日の本件学校の様子は,以下のようなものであった。

ア 当日は,保護者ら支援者らと被告在特会らとの衝突を避けるために,2限目以降,限られた閣係者以外が校内に立ち入ることを禁止しており,示威活動の開始時に校内に残っていたのは,○○校長と○○主任だけであった。

イ 集団での示威活動は終了予定時刻の午後4時を過ぎても一部の者が示威活動を続けたため, ○○校長と○○主任は児童達の帰校時刻を予定より延長することとし,引率の教職員に連絡を取り,指示があるまでバス内で待機するよう伝えた。

ウ この日,○○校長と○○主任が安全と判断して引率の教職員に帰校の指示を出したのは,午後5時頃であった。

(6)被告○○は, 示威活動2の様子を撮影した映像に「1月14日朝鮮学校による侵略を許さないぞ!京都ヂモ」というタイトルを付して,動画サイトに投稿し,これを公開した。

また,被告○○は,動画サイト「ニコニコ動画」に投稿した映像の説明文として,下記の宣伝を記載した。

「昨年5月23日から撮影を始め現在までの記録DVDが40枚程度となりました。そこで2009年度,関西保守活動記録DVDコンプロートBOX (18000円) バラの場合, 1枚1000円で販売します,希望される方は●●●まで, 「デモDVD希望」でメール下さい。リストと購入方法の詳細を返信します。売り上げは活動資金になります。」

(7) 被告○○は,示威活動2の後,主権会のウェブサイトに,デモ隊の写真や本件学校関係者の写真とあわせて「1月14日,その『勧進橋児童公園』を出発点にしたデモ行進を敢行!約50年にわたり児童公園から日本の子供たちの笑い声を奪った卑劣な朝鮮人へ今一度『 日本人を嘗めるな! 』の警告を発した。『差別・迫害されている朝鮮人は日本から出て行け!』のシュプレヒコールが不逞朝鮮人の頭上に絨毯爆撃を繰り返した」との活動報告文を掲載し,被告○○が投稿した上記映像を画面に埋め込み,閲覧できる状態にした。



9 示威活動3の経緯

(1) 平成22年2月中旬,示威活動1、2に反対する人々から「民族差別・外国人排斥に反対し, 多民族共生社会をつくりだそう!朝鮮学校への攻撃を許さない! 3. 2 8集会」なる集会(以下「多民族共生派集会」という。)の呼びかけがされた。多民族共生派集会の開催場所は,京都市東山区円山公園音楽堂であった。

被告○○は,多民族共生派集会が同年3月28日に催されることを知り,これに敵対する示威活動を四条河原町付近で行うことを企画し,京都府警察署に対し, それに関する道路の使用許可を申請した。

このような動きを知った被告○○は, 被告○○に連絡を取り,同日のデモは,本件学校付近で行うよう要請し,これを受けて,被告○○は,京都府南警察署に,始点を京都市南区所在の北岩本児童公園,終点を本件公園とする道路の使用許可を申請した。また,被告○○は, 前記前提事実6のとおり,同月16日,同月28日のデモについて被告在特会のウェブサイトで告知した。

(2) ○○校長と○○主任は,再び本件学校の付近で示威活動が行われようとしていることを知り,弁護士の協力を得て,平成22年3月19日,京都地方裁判所に対し,原告を債権者,被告在特会,被告○○及び被告○○を債務者として,本件学校の半径200メートル以内での示威活動等を禁止する仮処分を申し立てた。京都地方裁判所は,同月24日,申立てのとおりの仮処分決定を行った(本件仮処分決定)。

本件仮処分決定は,新聞等により全国的に報道がされた。原告は,京都府南警察署に本件仮処分決定の決定書の写しを持参し,警察官に対し,予定されているデモ行進の参加者らに対して本件仮処分決定の内容を知らせるとともに,十分な警備を実施するように要請した。

なお,本件仮処分決定は,被告○○には同月25日(示威活動3の3日前)に送達されたが,被告○○及び被告在特会に送達されたのは, 示威活動3の後であった。

(3) 被告○○は,平成22年3月24日,京都府南瞥察署にデモに係る道路使用許可証を受領しに行った際,同警察署において,京都地方裁判所が本件仮処分決定をしたことを知らされた。

被告○○以外にも, 少なくとも被告○○及び被告○○は, その後,新聞報道やインターネットを通じて,本件仮処分決定がされたことを知った。被告在特会のウェブサイト上の掲示板でも,同月25日には, 本件仮処分決定がされたことに触れる投稿がみられた。

しかし,被告○○や被告○○は,協議の上, 決行日は日曜であり,本件学校の授業は行われないから本件学校に与える影響は少ないものと考え,本件仮処分決定を無視することにした。

(4) 平成22年3月28日に行われた北岩本公園発の示威活動の様子は,以下のようなものであった。

ア 始点である北岩本児童公園では,当日,示威活動2のときと同様,京都南警察署の警察車両や警察官が同公園を警備していた。

イ 被告○○被告○○被告○○被告○○被告○○被告○○並びに参加者ら数十名は,午後3時30分頃に同公園に集合し, まず, 被告○○及び被告○○による演説が行われた。

ウ 参加者らは,その後,デモ隊を組んで,事前の申請のとおり,北岩本児童公園を出発し, 河原町通りを南進し,十条通りを西進し,烏丸通りを南進した。デモ隊は,当初は,そのまま解散地点である本件公園に向かうはずであったが,デモ隊に反発する者らの妨害に遭い, 久世橋通りに差し掛かる地点(本件学校の北側門扉中心部から約100メートル離れたローソン烏丸久世橋店の駐車場付近)において解散を余儀なくされた。

その問,被告○○及び被告○○並びに参加者の一部は, 拡声器を用いて,前記前提事実8(3) のとおりの発言を行い,これに続いて, 他の参加者らも「出て行けー」「帰れー」と一斉に声を出して気勢を上げた。

被告○○は, 本件街宣車に乗り, 拡声器を用いて「私たちはユーチューブでおなじみの主権回復を目指す会のデモ隊でございます」と発言し,被告○○が書いたメモを読み上げる形で番号23及び24の発言を行った。

エ 示威活動2のときと同様, デモ隊の先頭に立っていた数名の参加者は「朝鮮学校の公園占拠を許すな!不法占拠を『学校襲撃』にすり替える朝鮮人の下劣 差別迫害されている朝鮮人は本国へ帰れ!」と記載された横断幕を掲げていた。

(5) 被告○○は, 示戚活動3に先立ち,被告○○被告○○及び被告○○と協議をして,平成22年3月28日は,被告○○が申請していた四条河原町の道路使用許可を利用する形で,四条河原町において他民族共生派集会に街頭で対抗するための示威活動(四条での示威括動〕を別働隊として行うこととした。

また, 北岩本公園発の示威活動には主権会のカメラマンが同行することとされていたため被告○○は, 協議の上,四条での示威活動に同行して撮影を行うことになった。四条での示威活動への参加者は,事前に希望した者が割り振られたが, 四条での示威活動が行われることは,街頭で反対勢力に対抗する示戚活動を行うことに反対していた被告○○には伝えられなかった。

当日, 被告○○及びその同行者約十数名は,北岩本児童公園には集合せず,打ち合わせどおり, 四条での示威活動を行った。被告○○は,十数名の参加者に対し示威活動の趣旨及び注意事項を伝達し,先頭に立って発言するなど,終始,四条での示威活動の指揮者として行動した。参加者によって拡声器を用いて行われた主たる発言は番号25ないし28のとおりである。また, 参加者は「生きることは犯罪じゃない だが犯罪は許されない 不法入国、滞在は犯罪 不法滞在在日犯罪者は即刻,祖国へ帰還せよ」「生きることは犯罪じゃない 公園はみんなのもの 不法占拠は許されない 朝鮮学校はお金をたかる前に子供たちに日本の社会の正しいルールを教えよ」等と記載されたプラカード等を掲げていた。

その後, 参加者は,多民族共生派集会の行進経路を塞いで進路を妨害し, 機動隊に対しでも,盾をつかんで揺さぶったり, 体当たりを行うなどした。

また, 被告○○は,四条での示威活動の一部始終をビデオカメラで撮影した。

(6) 平成22年3月28日当日, 本件学校は日曜のため授業を行ってはいなかったが,本件学校内には○○校長と○○主任のほか3名の女性職員が教室の整理のために休日出勤していた。○○校長と○○主任は,示威活動3の開始時刻が近づくと,上記3名の女性職員を帰宅させ,校内には自分たちだけが残ることとした。

当日は, 他校でサッカーの試合を行っていた児童が学校に戻って解散する予定であったが,示威活動3が行われたため, 児童たちは本件学校から離れた地点で解散せざるを得なかった。

(7) 示威活動3の終了後,主権会のカメラマンにより撮影された北岩本公園発の示威活動の映像が公開された。

被告○○も,四条での示威活動の映像に,「3月23日 京都『差別に反対!多民族共生!左翼デモ』に抗議」というタイトルを付して公開し,その映像の説明文として,下記のような宣伝を掲載した。

「支援を宜しくお願いします→《中略》

HPから記録DVDが購入できるようになりました。売り上げは活動資金になります。」

(8) 被告在特会は,そのウェブサイトに「反日教育を推進する犯罪者の巣窟,子どもの未来を奪う児童虐待を継続して行っている朝鮮学校を一日も早く消滅させるため,在特会はこれからもまい進して参ります」との文章を掲載した。

被告○○は,主権会のウェブサイトに,示威活動3の写真や本件学校関係者の写真とあわせて, 「総連は3月28日,京都市内において市民の返還運動を執拗にねじ曲げる『差別された』とするデモ行進を予定。当会はこれに対峙して,同日同時刻に勧進橋児童公園を終着地にしたデモを実施した」との活動報告文を掲載し,主権会のカメラマンがアップロードした上記映像を画面に埋め込み, 閲覧できる状態にした。

他方で,被告○○は,後日,四条での示威活動が行われたことやその様子を知り,多民族共生派集会の進路を妨害したり,機動隊に有形力を行使した手法を問題視して,その責任を問うために被告○○を主権会関西支部支部長から解任した。これにより,主権会の関西支部は事実上解散状態となった(正式に解散したのは,平成23年3月26日である。)。
(筆者注:多民族共生は原文では他民族共生となっている箇所が多々あり。筆者責任において全て多民族共生とした。)


1 0 徳島県職員組合への抗議活動

(1 )被告○○被告○○及び被告○○は,平成 22年4月14目,徳島県職員組合が事務所を構える徳島県教育会館前において,同組合が受けた募金の一部を朝鮮学校に寄付したことに抗議する活動を行い, その後,同組合の事務所に侵入して拡声器で罵声を浴びせ,電話機を取り上げて職員の通話を妨害し,書類等をまき散らすといった事件が起きた。

被告○○はこれに同行し,上記の者らとともに徳島県職員組合の事務所に侵入し,その一部始終をビデオカメラで撮影した。

(2) 被告○○は,上記事件の発生を知り,平成22年4月20日,主権会のウェブサイトで,四条での示威活動と上記事件について主権会は「一切関知していません」という声明文を公表し, 同年5月3日には,ウェブサイトで,被告○○及び被告○○を主権会から除名するとの処分を公表した。



1 1 右京区役所前での示威活動

被告○○被告○○被告○○及び被告○○は,平成22年6月3日,京都市右京区役所前に集結し,右京区役所がこれに先立ち本件訴訟及び関連事件に関して,原告代理人に対し被告の戸籍謄本を交付したことを受け,拡声器を用いて,大音量で「ほんまにな,これ以上やったらな,俺もな●●する仕事16年やっとったからな,徹底的に個人の家調べてチョメチョメするかもしれんど,ほんまに覚えとけよ」「バカタレが,コラ,アホ」「また来るぞ。右京区役所。きっちりけじめつけたるからな。覚えとけよ」等の口汚い暴言を繰り返した。



1 2 本件刑事事件に関する訴訟費用の負担等

前提事実9(1)ないし(3)のとおり, 被告○○被告○○被告○○及び被告○○は,示威活動1や徳島県職員組合に対する事件に関する被疑事実でそれぞれ逮捕され,被告○○を除いて起訴された(本件刑事事件)。

被告○○は, 被告在特会の会員ではなく,主権会の関西支部支部長であったため,被告○○は,被告○○の保釈金を用意した。

被告在特会は,それ以外の者の裁判費用(保釈金や弁護土費用等)を負担した。ある人物が,裁判費用に充てる資金として一度に1000万円もの多額の寄付をしたため,被告在特会は,その寄付金によって本件刑事事件の裁判費用を賄った。



13 ○○校長に対する刑事処分

前提事実10のとおり, ○○校長は,平成22年8月31日, 都市公園法違反罪の公訴事実で略式起訴され,同年9月9日,罰金10万円の略式命令を発されたが, その公訴事実は,校長が,平成21年6月5日から同年12月4日までの間,京都市の許可を得ないでサッカーゴール2台, 朝礼台l台,スピーカー1台及びコントロールパネル1台を本件公園に設置し,占用したというものであり,都市公園法38条2号,6条1項を罰条とするものであった。



1 4 本件学校の統合移転等

(1)前提事実11のとおり,本件学校は平成24年4月6日をもって休校とされ,京都朝鮮第三初級学校に統合された。

(2) 本件学校の休校にあたり, 原告理事長が公表した「京都朝鮮第一初級学校を休校する件について」と題する文書では,休校の理由として, 校舎の老化が進んで, 耐震能力が危ぶまれていること。校庭がないため十分な授業を実施できないこと,児童数の減少から学校経営に支障が生じ始めていることのほか,本件示威活動により正常な教育環境が損なわれたことが挙げられていた。

(3) 被告○○及び被告○○は,平成24年4月20日,新校舎を建設中であった本件学校の移転先に赴き,許可なく立ち入って現地を見分した後,現場事務所の職員に対し,請負工事代金の資金原を問い質すなどした。その際○○は、「やっぱりな,ウンコ学校はウンコやな」「ここアジトや」などと発言した。

被告○○はこれに同行し,その一部始終をビデオカメラで撮影して,その映像を公開した。





第2  被告在特会の当事者能力についてに対する判断(争点1)

1 民事訴訟法29条により当事者能力が付与される社団とは,団体としての組織を備え,多数決の原理が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいう(最高裁判所昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号16 7 1頁)。固定資産などの基本的財産を有していることは社団というために不可欠なことではなく,団体の内部的運営や対外的活動に必要な収入を得る体制が備わっているかどうかを考慮して社団かどうかを判断すべきとされる(最高裁判所平成14年6月7日第二小法廷判決・民集56巻5号899頁)。

2 前記認定のとおり,被告在特会は、 活動方針を定めた「七つの約束」と称する綱領を有するだけではなく,会則により, 構成員の資格が定められ, 執行役員(会長, 副会長,事務局長等),執行役員会,総会及び幹事といった機関が置かれた団体である。その会則は,執行役員の選任には総会の承認が必要であることを定めるほか,総会の招集方法や決議方法,除名処分の方法について定めている。そして,会則が定める総会や除名処分は,実際にも行われている。

また,被告在特会の会員数は,平成24年頃には1万2000人を超えており,また,全国に37の支部を有しているところ,○○は,必要な場合には,支部に指示を出し,支部の活動を統制しているのである。

3 財産的側面についてみれば、被告在特会が固定資産を有しているかどうかは判然としないが,被告在特会は,寄付金を主要な活動資金としており,預金口座を公表して振込による方法で寄付を呼びかけ,クレジット決済による寄付も受け付けており,会長である○○は,総会で会計報告を行って承認を得るものとされている。したがって,被告在特会が,団体の運営や対外的活動に必要な収入を得る体制を有していることも明らかである。

4 以上のとおり,被告在特会は,団体としての組織を備え,多数決原理で運営される総会によって意思決定をし,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,団体の活動や運営に関する基本的事項を会則で定め,必要な収入を得る体制も有する人的団体であるから,民事訴訟法29条にいう社団として民事訴訟における当事者能力を有する。





第3 人種差別撤廃条約下での裁判所の判断について

1 わが国は,人種差別撤廃条約を批准した条約締結国であるから,私人間における人種差別が問題となる民事訴法において,人種差別撤廃条約がどのように影響するのかを予め検討する。

2 憲法98条2項は,わが国が締結した条約を誠実に遵守することを定めており,このことから,批准・公布した条約は,それを具体化する立法を必要とする場合でない限り,国法の一形式として法律に優位する国内的効力を有するものと解される。

3 人種差別撤廃条約は,「人種差別」について「人種,皮膚の色,世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別,排除,制限又は優先であって,政治的,経済的,社会的,文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し,享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義し (1条1項) ,締結国に「人種差別を非難しあらゆる形態の人種差別を撤廃する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとる」ことを求め、「すべての適当な方法(状況により必要とされるときは,立法を含む。)により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させる」ことを求めている(2条1項柱書き及びd) 。

さらに,人種差別撤廃条約の締結国は,その「管轄の下にあるすべての者に対し,裁判所を通じてあらゆる人種差別の行為に対する効果的な保護及び救済措置を確保し,並びにその差別の結果として被ったあらゆる損害に対し, 公正かつ適正な賠償又は救済を求める権利を確保する」ことをも求められる(6条)。

4 このように,人種差別撤廃条約2条l項は,締結国に対し,人種差別を禁止し終了させる措置を求めているし, 人種差別撤廃条約6条は, 締結国に対し,裁判所を通じて, 人種差別に対する効果的な救済措置を確保するよう求めている。これらは,締結国に対し,国家として国際法上の義務を負わせるというにとどまらず,締結国の裁判所に対し,その名宛人として直接に義務を負わせる規定であると解される。

このことから,わが国の裁判所は, 人種差別撤廃条約上,法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである。

5 もっとも,例えば,一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に,個人に具体的な損害が生じていないにもかかわちず,人種差別行為がされたというだけで,裁判所が,当該行為を民法709条の不法行為に該当するものと解釈し,行為者に対し,一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは,不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているといわざるを得ず,新たな立法なしに行うことはできないものと解される。条約は憲法に優位するものではないところ,上記のような裁判を行うことは、憲法が定める三権分立原則に照らしても許されないものといわざるを得ない。

6 したがって,わが国の裁判所は, 人種差別撤廃条約2条1項及び6条の規定を根拠として,法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うが,これを損害賠償という観点からみた場合,わが国の裁判所は,単に人種差別行為がされたというだけでなく, これにより具体的な損害が発生している場合に, 初めて,民法709条に基づき, 加害者に対し,被害者への損害賠償を命ずることができるということにとどまる。

しかし,人種差別となる行為が無形損害(無形損害も具体的な損害である。)を発生させており,法709条に基づき, 行為者に対し,被害者への損害賠償を命ずることができる場合には,わが国の裁判所は, 人種差別撤廃条約上の責務に基づき, 同条約の定めに適合するよう無形損害に対する賠償額の認定を行うべきものと解される。

やや敷衍して説明すると,無形損害に対する賠償額は,行為の違法性の程度や被害の深刻さを考慮して, 裁判所がその裁量によって定めるべきものであるが,人種差別行為による無形損害が発生した場合,人種差別撤廃条約2条1項及び6条により,加害者に対し支払を命ずる賠償額は,人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならないと解されるのである。



第4 本件活動の不法行為性について(争点2及び争点3に対する判断)

1 被告らの言動

前提事実及び前記認定事実に基づき,本件示威活動における被告ら及び参加者の言動,本件示威活動への被告らの参加状況を整理すると下表のとおりとなる(〈在〉とは被告在特会所属を,〈権〉とは主権会所属を表す。なお,前期認定事実4(1)のとおり, 被告○○及び被告○○は,本件当時,被告在特会のメール会員でもあったが,下表では,幹部を務めていた主権会に所属していたものと整理した。)。

2 示威活動1及び映像公開1について

(1)業務妨害となること

示威活動1は,校庭もなく敷地の狭い本件学校の南門において,授業中に,11人という大人数が拡声器を用いたり大声で怒号をあげるという形で行われ,しかも,本件公園のスピーカーを切断し,朝礼台を南門まで運ぶという有形力の行使を伴うものであって,児童や教職員を始めとする本件学校関係者を強く畏怖させるものであった。

実際にも,校舎内では,低学年の教室では教職員が教室の窓とカーテンを閉め,教室から出ないように児童に指示し,高学年の教室では交流会で流していた音楽の音量を上げるといった努力を行ったにもかかわらず,示威活動1の怒号を防ぎきれず,低学年の児童の多くが恐怖のあまり泣き出したり、児童の安全確保のために下校時刻が1時間程度遅れることになるなど,本件学校が極度の混乱状態に陥れられたのである。

示威活動1が,原告の本件学校における教育業務を妨害する不法行為に当たることは明らかといわなければならない。

(2) 名誉棄損となること

示威活動1の映像は,多数のけんか腰の大人が学校の門の前で大声で怒鳴り散らすという刺激的な映像であり,必然的に, 本件学校を世間の好奇の目に曝すという効果を持つ。したがって,示威活動1及び映像公開1は,本件学校を世間の好奇の目に曝しながら,本件小学校を経営する原告が,昭和35年(本件学校が本件公園北側に移転した時期)から平成21年まで50年間もの長きにわたり, 本件公園を不法占拠したこと, 原告が本件学校の敷地も暴力で, 奪い取ったこと,本件学校が北朝鮮のスパイを養成していること,本件学校の児童の保護者は密入国者で, あることを,不特定多数人に告げるという行為あり,原告の学校法人としての社会的評価たる名誉・名声(以下,単に「名誉」という)を著しく損なう不法行為である(原告は「信用」も毀損されたと主張するが,原告のいう「信用」とは,経済的信用ではなく,学校法人としての「信頼性」ということであろうと思われる。そうだとすれば,原告のいう「信用」とは社会的評価としての名声・名誉と同義であろうと解される。)。

3 示威活動2及び映像公開2について

(1)業務妨害となること

示威活動2は,本件学校の授業が行われる平日に行うものと予告され,その出発地点は本件学校に隣接する本件公園とされていた。示威活動2が前記認定のとおりの非常に過激で非常識なものであった以上, 被告らが本件学校周辺で示威活動を行うという日に, 本件学校の校舎で平穏に授業を行うことは困難であったということができる。すなわち,示威活動2の日に,校舎での通常の教育活動を取り止め, 課外授業・課外保育に切り替えた原告の措置は,やむを得ないものといわなければならない。

実際にも,当日は約30名の大人数が,街宣車及び拡声器を用いて怒号をあげる示威活動を行ったのであり, また,参加者らの一部が解散の予定時刻を過ぎても示威活動を継続したため,課外授業に出ていた児童たちはバス内で待機させられ,午後5時頃まで帰校できなかったのである。

示威活動2が, 示威活動1と同様,原告の本件学校における教育業務を妨害する不法行為に当たることは,明らかである。

(2) 名誉毀損となること

示威活動2及び映像公開2は,本件学校が本件公園を占拠したことで日本の子どもたちの笑い顔を奪ったこと、本件学校が北朝鮮のスパイを養成していること,本件学校が無認可で設置されたこと,本件学校は学校ではないこと, 本件学校で働く教師が北朝鮮工作員であることを,不特定多数人に告げるという行為であり,原告の学校法人としての社会的評価たる名誉を著しく損なう不法行為である。











                                    (理由2に続く)

朝鮮学校嫌がらせ事件裁判判決 主文


主文

1 被告在特会、被告N・S主権、被告N・H、被告A、被告K、被告N.S及び被告Mは、原告に対して、連帯して、544万7710円及びこれに対する平成21年12月4日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告在特会、被告N・H、被告Y、被告A、被告K、被告N・S主権、被告N.S、被告N・T、及び被告Mは原告に対し、連帯して、341万5430円及びこれに対する平成22年1月14日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。

3 被告在特会、被告N・H、被告Y、被告A、被告K、被告N・S主権、被告N.S、被告N・T、及び被告Mは、原告に対し、連帯して、330万円及びこれに対する平成22年3月28日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。

4 被告在特会、被告N・H、被告A、被告K、被告Y、被告N・T、及び被告Mは、自ら下記の行為をしてはならず、かつ、所属会員や支援者等の第三者をして下記の行為をさせてはならない。

(1) 京都市伏見区上小栗栖丸山1番地2所在の京都朝鮮初級学校に赴いて、原告の代表者、原告が雇用する教職員及び同校に通学する児童並びにその他原告の関係者への面談を強要する行為。
(2) 上記朝鮮初級学校の北門門扉の中心地点を基点として、半径200mの範囲内における次の行為
 ①  拡声器を使用し、又は大声を上げるなどして、原告を非難、誹謗中傷するなどの演説をしたり、複数人で一斉に主義主張を大声で唱えること(いわゆるシュプレヒコール
 ② 原告を非難、誹謗中傷する内容のビラ配布。
 ③ 原告を非難、誹謗中傷する内容の文言を記載した旗や幟を上げて佇立又は徘徊。


5 原告のその余りの請求をいづれも棄却する。
6 訴訟費用はこれを10分し、その4を被告らの負担とし、その余りを原告の負担とする。
7 この判決は、主文1項ないし3項に限り、仮に執行することができる。




                                        (理由へと続く)

徳島県教組による民事訴訟

2010年4月14日に、在特会・チーム関西によって引き起こされた所謂「徳島県教組襲撃事件」に対し、去る8月6日、徳島県教組が記者会見により民事訴訟を起こした事を公表した。
これは、先の徳島県教組襲撃事件刑事裁判で漏れた被告2名を検察審査会にから起訴に持ち込んだ流れの一環であり、未だに継続されるヘイトクライムを許さない徳島県教組の態度を明らかにしたものである。
なお、この民事裁判の原告は、徳島県教組と事件時書記長であった個人の1団体1個人となっている。


以下は徳島県教組決議と、元書記長による記者会見メッセージ。



排外主義を許さず,共生社会をめざす特別決議
〜 徳島県教組書記局襲撃事件は終わっていない。 新たな闘いを始める! 〜

 2010年4月14日,在特会らによる県教組書記局襲撃事件から,丸3年。私たちは,民事訴訟にも踏み切る決断をした。また新たな闘いが,いまここから始まる。
 これまで私たちは刑事訴訟を通じて,彼ら在特会らのメンバーの言動がいかに凶悪な犯罪性を有するものであるかを訴え続けてきた。主犯格3人は京都朝鮮学校事件と合同裁判となり「有罪判決」がくだされた。いったんは不起訴となった者たちに対しても,徳島検察審査会への審査申し立てを通じ,「不起訴不当」議決がなされた。
 この間,私たちの訴えと強力に連帯すべく,「民主主義に対する暴力を許さない徳島実行委員会」が結成された。「起訴を求める団体署名」では,県内外をあわせ1500筆を超える署名が集まった。これらの動きは,本事件がまぎれもなく「許されざる犯罪」であることを証明するものであり,民主主義を脅かすような暴力行為に対する市民の怒りの大きさを物語るものである。
 しかし,その後も在特会らのメンバーは,自身の過ちを認めるどころか,反省のかけらも見られず,その醜悪なる行動は過激化の一途をたどるばかりであった。
 特に,「竹島問題」「朝鮮学校授業料免除不許可問題」「朝鮮学校助成金問題」などでは,一般の人を巻き込みながら,ヘイトスピーチやその行動を正当化しようとしている。また東京においても,新大久保外国人排斥デモなど深刻な人権侵害問題が多数,起こっている。さらに,すでに有罪判決をうけて執行猶予中の在特会らのメンバーが,ロート製薬などに対して新たな襲撃事件を起こしている始末である。
 有罪判決は,何の歯止めにもなっていない。事実無根の言いがかりをつけ,言いたい放題・やりたい放題の限りをつくす彼ら彼女らを結果的に「放置」してしまっている現状では,被害を受け,苦痛にさらされた者が自ら目をつぶり,耳をふさぎ,息を潜めて生きていかなければならない。これを「民主主義の崩壊」といわず何といえばいいのか。
 刑事訴訟だけでは限界がある。彼ら彼女らの行いの過ちを明らかにし,差別を許さず,暴力を許さない社会をめざすために,私たちは民事訴訟に踏み切る。
 今後とも,徳島県教組は,排外主義を許さない立場で,共生社会をめざす運動をさらにすすめていく。これから始まろうとする裁判にむけて,組合員の積極的な傍聴行動や報告集会の参加を提起する。自らの主張のためには手段を選ばず,一方的に罵声を浴びせて攻撃するという民主主義の根幹を否定する人たちを私たちは決して許すことはできない。徳島県教組は,多くの支援者とともに,今後もさらなる闘いを続けていくことを決議する。

2013年8月5日
第165回徳島県職員組合中央委員会




2013年8月6日民事裁判提訴の記者会見メッセージ(元書記長)

 この3年間というもの、一日たりとも、あの忌まわしい事件のことを忘れたことはありませんでした。教育にかかわる者として、教育を受けることが困難な状況にある子どもを支援していくことは、当然のことです。私は、教職員組合の専従役員として、組織決定に基づき「子ども救援カンパ」に取り組みました。そのことに何らやましいことはありません。にもかかわらず、大人数で押し掛けて私を取り囲み、怒号と罵声の渦中に晒され続け、身の危険さえ感じました。襲撃されたと言っても過言でない状況に陥れられたことを許すことはできません。この間ずっと、組合として刑事処分を求め続けてきました。そして、彼らの犯行そのものは違法であるとの判決が下されました。しかし、彼らの怒号と罵声の数々は、刑事裁判では評価しつくせないと思っています。
 私に対する数限りない暴言の一つひとつを、なぜ私はこれから忘れる努力をしなければならないのでしょうか。事実無根のことを言い連ね、言いたい放題やりたい放題の限りを尽くした者が、謝罪することもなくまかり通ってしまう社会を認めてしまうことになりかねません。このようなことが制裁を受けないで表現の自由だとされることに、ふつふつと怒りがこみ上げてきました。
 排外主義的なヘイトスピーチに対する規制法が確立していない日本だからこそ、人権侵害する言動、人を恐怖に陥れる言動に対し、裁判所がしっかりと対応する必要があると判断し、訴えを起こしました。これまで私だけでなく多くの人たちがヘイトスピーチによる苦痛を受けてきています。裁判によって、二度と私のような苦痛に晒されることのない社会の実現を求めていきたいと思っています。





なお、この民事訴訟の被告は「在日特権を許さない市民の会こと高田誠氏」の1団体と他10個人であり、徳島県教組襲撃事件に参加しその後も排外活動を繰り返している被告らである。
損害賠償額は計1683万円。内訳は業務妨害、建造物侵入、名誉棄損による損害賠償及び慰謝料である。

民族差別を扇動する集団的言動に対する会長声明(大阪)

大阪弁護士会より以下の声明が出されました。関西カウンター一同は、レイシストに対するカウンターに何時もご尽力していただく大阪弁護士会所属の弁護士さんらに感謝しております。




民族差別を扇動する集団的言動に対する会長声明


大阪市内のJR鶴橋駅周辺などの街頭において、在日コリアンに対する民族差別を扇動する言動が繰り広げられている。たとえば、「出ていけ、出ていけ、朝鮮人。」、「殺せ、殺せ、朝鮮人。」、「鶴橋大虐殺を実行します。」などの発言がなされている。
これら集団的言動は、憲法第13条が保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷つけるものであり、在日コリアンの自由や安全を脅かし、そのアイデンティティを否定するものであるだけでなく、日本人も含めた居住者の平穏に生活する権利を侵害するものである。
市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第20条第2項は、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」と定めている。いわゆる人種差別撤廃条約第2条第1項(d)は、「いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。」と規定している(同条約第1条は、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先」を人種差別としている。)。
さらに同条約第4条柱書は、「人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。」と定めている。
わが国が批准しているこれらの国際人権条約に照らしても、現在行われている民族差別を扇動する集団的言動は、表現の自由として保護される範囲を逸脱している。
日本弁護士連合会は、2004年(平成16年)10月の人権擁護大会で、「多民族・多文化の共生する社会の構築と外国人・民族的少数者の人権基本法の制定を求める宣言」を採択し、多文化の共生する社会を築き上げるべく全力を尽くすことを宣言している。
また、近畿弁護士会連合会は、2010年(平成22年)3月の理事会で、「在日コリアンの子どもたちに対する差別を非難し、差別防止のための施策の充実を求める決議」を採択している。
当会は、民族差別を扇動する集団的言動が、大阪市内の街頭でなされている現状を深く憂慮し、基本的人権を尊重するわが国において、そのような集団的言動が法的にも許容されないことを表明する。

2013年(平成25年)7 月2日
                               大阪弁護士会
                               会長 福 原 哲 晃





この動きが全国にさらに広がればと願っています。

第18回口頭弁論 傍聴記

6月13日、朝鮮学校嫌がらせ裁判も、19回目となりついに結審を迎える事となった。
この日も、多数の学校支援者が傍聴に訪れ、マスコミ関係者も集まり、傍聴席は抽選となった。筆者はそれでも当りとなるから、お前は書けと何かに言われている気がしていますよ。でも、これで最後の判決傍聴抽選に外れたら、「ビローン」の後ろで泣きながら踊り狂おうと思います。判決の報道に注目してください。




さて、この日、裁判長は何時ものように、前回裁判以降に提出された、原告被告双方の書面と証拠物の確認をした。
原告側の書面は14,15,16,17の4点の準備書面が提出されており、それぞれ、損害論をコンパクトにしたもの、民族教育についてのもの、証拠に照らしたもの、学校移転にともなう差し止めについて整理したものとなっている模様である。
それに対して被告側は、表現の自由に関する書面が一点提出された模様。
また、原告側が後に読み上げられる具弁護士の陳述書と、ヘイトクライム研究の専門家である前田朗氏の意見書が出され、被告側は被告人である八木氏の陳述書が提出された。
また、これ以外に、証拠物が幾つか出されたようだが、以上のものらはおいおい確認、紹介していきたい。


次に、最終意見陳述として原告側は、この裁判の初回で陳述した、本件朝鮮第一初級学校卒業生であり学校弁護団の一員である具弁護士が、被害の本質である朝鮮学校児童の民族的アイデンティティへの影響について、自らの体験も交えた意見を述べた。学校弁護団はこれにより、朝鮮学校と、父兄保護者らと、そして児童たちと、ともにこの裁判を戦ったという姿勢を見せた。

その具弁護士の最終陳述は、まず、今回の事件が学校、児童に与えた影響を、嘗てのチマチョゴリ切り裂き事件を取り上げ、学校が疲弊していく様子が語られた。また、自らが受けた嫌がらせ体験をもとに、児童が受ける民族的自尊心への深い傷を説明し、本件事件が、過去より行われていた、コソコソとした個人の単発的な攻撃ではなく、集団的、計画的であり、悪質性をもったネット配信により、深刻な被害をもたらした事を述べ、これらが現在の新大久保、鶴橋でのヘイトスピーチが野放し状態になっている現状に繋がっている点を訴え、その司法判断を求めた。
この具弁護士の最終陳述は、全文、次回に紹介する予定。


次に、被告側より、被告代理人徳永弁護士が意見陳述をした。
まず、3回に渡る街宣行為を行なった事実と、それによる刑事で有罪とされた事と、それによって主権回復を目指す会在特会と対立するようになったなどを述べ、政府が朝鮮学校を無償化からはずし、補助金を差し止める情勢と半島情勢について語った。
その上で、中国、韓国により、日本人が恥ずかしい思いをさせられており、ヘイトスピーチの現状を「反発」であると、私(徳永弁護士)は感じていると述べ、民族アイデンティティで共通する土俵があるのではと、この訴訟を通じて私(徳永弁護士)は思ったと述べた。
新大久保、鶴橋のヘイトスピーチは多くの国民が眉をひそめるヘイトスピーチの繰り返しであった。これに反感をもった「レイシストしばき隊」が「反レイシスト」の看板を掲げて、過激な言動を競い合うという状況が発生している。こうしたエスカレーションは、警察に抑え込まれているが、ヘイトスピーチ規制論が弁護士会や政治の場で議論されるようになっている。本件で問題になっているヘイトスピーチの規制論は、アメリカで1992年の連邦最高裁で、表現の乱用に対する規制であって、違憲であるとされた。アメリカでは規制する動きがほとんどなくなった。カナダにおけるヘイトスピーチの規制は6月5日に上院を可決して「ネット上の規制」は廃止される事になった。ヘイトスピーチの議論は各国で盛り上がっているが、一つの方向に向かっているとの原告の主張は誤りと思う。
被告らは街宣活動の表現行為との側面を強調してきた、確かに児童が通う学校の前で、拡声器を使ってわめきちらし、授業を妨害し、子供たちを怯えさせたという事は、その犯罪性は疑う余地はない。しかし、そこに表現行為の余地はないのか?その点、深く懸念している。少なくともネットで掲載された彼らの表現、公園の不法占拠をやめろ、或いは朝鮮学校の在り様に対する誹謗中傷的表現、それも表現の自由、政治的表現の保護の範疇にあると、代理人は信じている。公正な論評の法理、どんなに酷い表現であっても、公共の事実にたる、信じるにたる相当な根拠があるなら保護されるべきで、意見はわかれるが、被告ら公共の目的をもった正義の行動だと思っている。
以上。後、イギリスの裁判官が言った言葉があったが、省略。

この後、八木氏の陳述を代理人が促したが、八木氏は何故か断っている。

また、原告側より、カナダでは今現在、「ネット規制法」はまだ廃止されていないと指摘され、被告代理人はこれを認め、深いため息をついた。



被告側代理人の陳述というのは、現在の在特会などへのカウンター状況をどっちもどっちとあざとくもっていこうとする悪質なとこもあり、つらつらと述べてはいるが、早い話が、犯罪行為は認めるけど、表現の自由ですよというものであった。
これは、この裁判の初めから近い文脈で遠回しに言っていたものを「被告らは街宣活動の表現行為との側面を強調してきた、確かに児童が通う学校の前で、拡声器を使ってわめきちらし、授業を妨害し、子供たちを怯えさせたという事は、その犯罪性は疑う余地はない。」とはっきりと述べたとこに特徴がある。
しかし、この陳述はこれでも欺瞞に満ちている。
被告らが、この裁判で当初から主張してきたものの一つに「50年にわたる不法占拠」という「嘘」がある。これは裁判で明らかになったように、行政、地域、学校の三者協定により使用をしてきたものであり、阪神高速建設工事が始まるまでフェンスですみわけがおこなわれていたものだ。

朝鮮学校いやがらせ事件における公園使用の経過(弁護団第三準備書面より)」
http://d.hatena.ne.jp/arama000/20101215/1292420581

また、被告らが拠り所にする「元校長の略式起訴」の件も、半年間に不法物を置いたものであるが、これも当時、公安警察による滋賀朝鮮学校を始めとする家宅捜査などが続いていた時期で、元校長は学校を守るために苦渋の中、検察に認めた経緯がある。
さらに、被告らは、行政の撤去の約束があった事を知りながら、襲撃を決行した悪質性も裁判で暴露されている。
いったい、何処に徳永弁護士の言う「事実にたる根拠」があるのだろう?
被告らが3回にわたって行った、デモ・街宣で叫んだヘイトは全て「嘘・出鱈目」である。何一つ事実などない。

この裁判は、「児童が通う学校の前で、拡声器を使ってわめきちらし、授業を妨害し、子供たちを怯えさせたという事は、その犯罪性は疑う余地はない」だけを問題にしているのではない。それだけを問題とするならば、事実の隠ぺいであり事件の矮小化を図っているとしか言えない。
この裁判の本質は、あの校門の前で、そしてデモで叫ばれた、嘘、出鱈目によって貶められた児童の尊厳、学校の尊厳、父兄の尊厳を取り戻すための裁判である。
そして、あの襲撃時、被告ら傍観していた警察、事件をうまく処理するためだけに元校長を略式起訴した検察、責任から逃れようとする行政。そして社会に対して、自らの尊厳を賭けた裁判なのだ。
想像してほしい、この襲撃事件が「日本学校」であったならば。即座に、被告らは犯罪者として処理されていただろう。そのための、保護者らの血のにじむような辛苦はあっただろうか?弁護団のここまで戦いはあっただろうか。
被告代理人の陳述が、一見もっともらしく聞こえたならば、それは間違っている。



最後に、世界7月号に中村一成氏の「ヘイトクライムに抗して ルポ・朝鮮学校襲撃事件」の第一回が掲載されている。そこには襲撃事件の時、あの校舎の中で何があったのか、そこから裁判に至る過程が詳しく書かれている。筆者が見聞きしたもの以上の事実があり、何よりも筆者が書きたくても能力がなく書けなかったものがある。是非、手に取って読んでほしい。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/



次回、朝鮮学校嫌がらせ裁判第20回口頭弁論は、判決。
9月26日(木曜日)午前11時より。京都地方裁判所101号法廷にて。

第17回口頭弁論傍聴記 まとめ


第17回口頭弁論は、本件裁判において最後の証人尋問となっている。
まず、初めに証言された、Fさんは、当時、京都朝鮮第一初級学校に児童を通わせる父兄の一人である。そしてその証言は胸を詰まらせるものであった。
最初に、自らの朝鮮学校体験が語られ、そこでは「朝鮮」という言葉が蔑みの表現と感じた中、朝鮮学校に通い始め、朝鮮を学び、故郷の歌を覚え民族衣装を学校で着て胸を躍らせる事で、「朝鮮」という言葉が生きていく支えとなった自らの体験を語った。
また、阪神高速道路建設工事がはじまり公園が縮小される中、近隣住民らの話を聞き、公園を分かち合うための努力がなされた経過も証言した。
そして、2009年12月4日の事件。自らの子供が通う学校に、在特会などのヘイト街宣が行われていると知らされ、いてもたってもいられず、車で学校に向かい、そこで聞くに堪えないヘイトの中、わが子の安否を心配する心情を証言。さらに、在特会が去った後の、子供たちを守れたのかという問いと、呆然としショックを受け、起こってしまった現実にどう対処したものかわからない虚脱した学校風景があった。
さらに、襲撃事件以降、事件映像が拡散され、子供たちの変化に気をやり、疲弊していく惨状が語られ、その後2回に渡る、在特会等のヘイトデモによる攻撃に対してその対処のための心労を重ねていく状況が一つ一つ生々しく語られた。
その後、この裁判を起こすにあたり、何故、自分たちが「さらし者」にならねばいけないのか、何故、自分たちが「被害者」にされるのかという不条理極まりない葛藤ののち、自らの尊厳を取り戻すための戦いを決意して様も証言された。
この、在特会等の3回に渡るヘイト街宣・デモは学校に何をもたらしたのか。朝鮮学校が築き上げてきた尊厳を砕き、父兄と子供を傷つけ疲弊させ、朝鮮学校が積み重ねてきた地域との信頼関係を一瞬にして潰すという破壊的な惨状をもたらす被害があった事明らかにされた。
これは、前回裁判において証言された、学校父兄Aさん、教員Bさんの証言とも繋がり、学校側の訴えは、朝鮮学校の存在意義と謂れなき偏見を打破しようという父兄の共通の訴えであった。


次に、本件裁判最後の証人として同志社大学教員である板垣さんの証言があった。板垣さんは歴史学社会学の専門家の立場から、朝鮮学校の歴史、教育内容、学校をとりまくレイシズム環境についての証言がなされた。
まずはじめ、朝鮮学校は運動という側面により存続があるとの指摘を行った。その中では、学校運営は教師の給与面も含めボランティア的な側面があり、父兄の支援を始めとした学校に係る人々の活動がなされているとの証言。例として、通学定期券などは運動の中で認められたものであり、学校の教育環境が一つ一つ運動によってかち取られたものとの証言であった。その上で、戦前の夜学からはじまる、連綿と培われてきた民族教育の歴史を語った。
また、教育内容も時代により変化してきた過程を指摘、現在は日本で生活するため教育がなされているとの証言。
そして、学校の教育内容も、現在の教科書をもちいながら、在特会等がいう「反日教育」というものの虚構性を明らかに、朝鮮学校教育内容は、子供たちに日本に住むうえで必要な教育がなされており、朝鮮学校が日本の排外的圧力環境の中で、子供たちを朝鮮人として生きていく民族的アイデンティティを養う教育であるとの指摘がなされました。
さらに、板垣さんは、今、朝鮮学校が置かれている日本の排外的風潮の厳しさをあげ、具体的に事件を引き起こした在特会等を引き合いに、朝鮮学校が標的とされるレイシズムの内容とその具体性を証言した。そして、12月4日に始まる本事件は、レイシズムとはどのようなものか、「教科書」に載せてしかるべき事件であるとの証言もあり、レイシズムを研究するものならば、これぞ「レイシズム」そのものであるとの評価を述べた。


それら、上記2名による証言に対する反対尋問であるが、在特会など被告側は、相も変わらず、「拉致事件を引き起こした北朝鮮」と「洗脳教育である朝鮮学校」を結び付ける印象操作に腐心する尋問が行われた。
ここらへんについて、筆者は前から疑問に思っているのだが、この事件は「朝鮮学校に対する出鱈目な偏見により、犯罪行為を起こした被告らを裁く」裁判である。
被告らが未だに唱える「50年に渡る不法占拠」などというものは、既に刑事裁判においても相手にもされていない。ましてやそこで「朝鮮学校は洗脳教育」であるなどと学校の実情をろくに知らないまま事件を引き起こした事は、被告代理人の反対尋問からも明らかである。彼らの「偏見」がいったい何の情状酌量になるのかさっぱりわからない。

そして、もうどうしようもない、在特会副会長八木氏の尋問?であるが、彼は朝鮮大学にいったおり、「ブルーリボン」をつけているから駄目と入校を断られたというが、原告弁護団が言うように、日の丸を掲げて「ケンカ腰」で「朝鮮人を殺しにきた」などと怒声を上げていれば、それは断られて当然である。いや、断らない方がどうかしている。

在特会は2008年より、連続して朝鮮大学に押し掛け嫌がらせを行っている)
「2011 1106 在特会 朝鮮大学創立55周年抗議1」
http://www.youtube.com/watch?v=51ec6t3jcus


さらに、唖然としたのが、八木氏は、最初何を言いたいのか裁判長も理解に苦しんだ、「「阪神教育事件」が政治活動なら、我々の本件活動も政治活動」であるというものだ。
これは、板垣さんの証言にもあるように、「阪神教育事件」というものは「阪神教育闘争」と呼ばれ、権力に対してマイノリティが生存権をかけて戦った「政治運動」と呼ぶべきもので、「50年に渡る不法占拠」などという妄想をもとにした犯罪行為と一緒にするほうがどうかしている。
これは、裁判長も重々ご承知のようで、「適切な反対尋間ではないから、制限します」と被告側の印象をさらにマイナス方向に引っ張っていくもののようだ。

ついでに書き加えると、この「阪神教育事件」というのは、この八木氏自身が「戦後混乱期に暴虐をつくした朝鮮進駐軍の犯罪行為」の証拠として、国会図書館で集めた「資料」の一つに入っていたものである。
何時の間に「朝鮮進駐軍の犯罪行為」というのを、彼は「政治運動」と認めたのだ?
一つ思い当たるふしは、八木氏の出してきた「資料」の中に各「警察史」というのががあるのだが、そこでは、その取り締まりをしていた警察が「阪神教育事件」を「政治運動」と認識しているのだ。
八木氏の頭の中では「暴虐なる朝鮮進駐軍の犯罪」はこれで単純に「政治運動」となったかどうかはわからないが、「犯罪」と「政治運動」という言葉の意味を自分勝手に都合よく解釈する「在特会的体質」というものの一つの事例である。



次回、第18回口頭弁論で、本件朝鮮学校嫌がらせ裁判は、いよいよ結審となる。


●日時:6月13日(木) 
14時00分開廷/集合時間 13時00分

第17回口頭弁論傍聴記 証人板垣氏 2


被告側反対尋問



朝鮮学校における教育内容のことについて、ちょっと確認させていただく。 朝鮮歴史で、南朝鮮のことも書いてあるというふうに言われたが、これは、北朝鮮側から見た南朝鮮の歴史ということではないかというふうに聞いているが、その点はどうか。
基本的にはそうで、と同時に、韓国のいわゆる統一志向の歴史研究者たちが言っている内容とも、さほどかけ離れていないというふうに思う。

◆よく、大韓航空機事件だとか、いろいろあった政治的なテロ事件、あるいは、韓国の中であった光州事件だとか、そういったものに対する評価、そういったものは、かなり韓国のものとは違うんだということを聞いているが、その点は御存じか。
大韓航空機事件は多分入っていないと思う。で、光州事件に関しては、民主化運動側の観点が入っていると思う。

◆で、その民主化運動の観点というのは、文民政権になっていく韓国の歴史観になっていくので、その点では、そんなに変わらないようにも思うが。まあ, これもよく聞く話なのだが、朝鮮戦争の原因が何であったかということについて、南北の歴史観は随分違うようなのだが、その辺りはどうか。
ここは割れるとこだ。教科書では、米帝によって始められたというふうに書いてあると思う。で、1950年6月25日に、どこが始めたかという点では、もう、今、学会では、北の方から始めたっていうのが定説になっているが、そういう中では、それとはちょっと一致しない部分があると思う。と同時に、一方で、そうは言っても、朝鮮戦争、本当に、50年6月25日に始まるのかという議論が、南にもあることは確かで、つまり、それ以前からのプロセスで考えた場合、必ずしも北が全部始めたとは言えないと言う議論も韓国の中ではある。だから、ここはまだ論争の中身、論争中のとこだと思う。

◆そうではなくて、教科書には、米軍から始めたっていうふうに書いてある。
そうだ。米帝がっていう言い方だと。

米帝がか?
はい。

◆で, そこは、確かめようが、実はないので。で、いろんな憶測を生んだり、誤解を生んだり、或いは、よくない決め付けかも。そういうことはあるのだが、これは公開されていないのか。
どうだろう。いろんなイベントをやっている時に、教科書展示は、よくやっている。朝鮮学校関連の。同志社大学でも、一度コンサートをやったときに、その辺の机に一杯並べておいた。それは公開していないという話にはならないと思う。 まあ、朝鮮語で書いてあるので、普通の人は読めないというのはあるかもしれないが。

◆それは、民間人でも、手に入れることはできるのか。
私は持っている。1セット全部は持っていないが。 ただ、話を聞くとかって,そういうのが出回って、いっぱい揶揄された経験があるので、すごく慎重になっているという話は聞く。だから、悪用しないだろうという確約がある人には渡しているという可能性はある。

◆それは、やはり揶揄される可能性があるという事か。
まあ, されたという実績があるという事だ。

◆で、現在は、改定されたと。2003年。
 そうだ。

◆それから以降も、そういう形で、一般公開っていう形では、今、ありませんよね。
禁止しているかどうかまでは分からないが、とにかく、見られる状態にはある。

◆そうなのか。
はい、 一般の人が。買えるかどうかは分からないが。

レイシズムのことについて、ちょっと確認したいが、結局、先生が今言うのは、在特会が行っていると言うレイシズムというのは、文化的レイシズムという範疇に入るという意見か。
在特会に限らず、日本では、欧米のような科学的レイシズムって、ほとんど、ちゃんとした形をとったことがなくて、歴史的にはほとんど文化的レイシズムだった。で、その現代編というふうに考えているという事だ。

◆この文化的レイシズムというふうに言われる範疇のものは、これは、社会的には許されない言論だという意見か。
白身は、そういうものも、制限ないし、なくなっていってほしいというふうに思っている。

◆例えば、在特会側の意見、あるいは主権回復側の意見だが先ほど、八木さんの証言を引用して、悪い朝鮮人と良い朝鮮人があるのだという言い方をした。まあ、それは非常に粗雑な言い方で、そういう言い方自体がどうなのかなあというふうにも思うが、彼らが一貫して主張しているように見える、少なくとも、表現上、主張しているのは、日本で暮らすのであれば、日本の法律を守れよっていう、そういう主張なのだよと。で、法に違反しているということを、そのまま放置しておくのはおかしいじゃないかと言う意味で、自分たちは使っているのだという主張だ。そういうのも、やはり、文化的レイシズムということになるのか。
基本的には、あんまり、そのテキストの中身だけでは分からないところがあって、どういう場所で、どういう時に、どういう機会で、誰が誰に対して言うかっていうところで見えてくるものなので、で、その中でも、いい朝鮮人がいる、悪い朝鮮人がいるっていうのは、その物差しを誰が持っている、誰がどういうふうに、いい、悪いを判断するのかっていうところで、これはよかれと思って在日側がやった事が、それは悪い朝鮮人だと言われる可能性もあると。まあ、そういう中で・・。

◆今の私の質問は、法に違反するかどうかっていう基準で・・。

(裁判長)まあ、代理人が質間された内容がレイシズムだと考える人は、多分いないから、代理人が言うような、八木さんの、いい朝鮮人、悪い朝鮮人の、あの話が、代理人が言うように、朝鮮人も日本人も、日本国内にいる以上は日本の法令を遵守して、違法なことは同じように、しない、同じように振る舞おうよという意味であれば、それは、その字句だけを提えれば、特に何の間題もないわけだ。
まあ, 字句だけを提えればですね。

◆そこ、確認できて良かったと思う。
本件は、大分話が違ってくる。

◆だから、その、本件ということになってくるわけで。本件で、在特会側が主張しているのは、違法状態を作っていると。そして、そのことを誰も問題にしないと、それを我々は問題にしたんだっていうことを、白分たちの行為の正当化の第一の理由に挙げている。これは、先ほど申し上げた、一応、法に従うかどうかということを基準にしているということになるが、先生の見解は、本件については違うと。
違う。

◆そこをもうちょっと、詳しく、端的に話してほしい。
まず、厳密に言うと、法律違反だったのかもしれないが、基本的には、関係する当事者間の合意がある中で使用されてきた場所だというふうに、私自身は認識している。

(裁判長)それもね、多分、前提が違うから、そういう前提だったら駄目なのでしょう。答えは。
◆そうですね。

(裁判長)仮に、違法に使っていたというのが本当なら、どうですかっていう質聞のはずだ。その前提でお答え願えるか。
その前提で。例えば、その学校の責任者、あるいは市当局にゆっくり話合いをするぐらいならばレイシズムとは言えないだろうというふうには思う。で、やはり、学校の前に来て、ああやって子供らがいるところで騒ぐと、あの内容で、それと関係ないものを大量に含むようなことを、ほとんど、それを口実に、私から言うと、被告らは、それを口実に、そういう何か、いいネタをつかんで、朝鮮学校を攻撃しているだけに見える。だから、それが主目的、その法的違反っていうことを、何か正すのが主目的には、私にはあんまり見えなかったという事だ。で、そういうのが、レイシズムだろうというふうに考えているという事だ。

◆被告本人(八木)。ちょっと、板垣先生とは、認識が違うところがある。今回、意見書を読ませていただきまして、朝解学校が、今はオープンにしていると。特に、文化祭のときに、入れるよということなのなのだが、実はこれ、在特会が、平成20年、平成21年に、朝鮮大学校に入ろうとして、で、そのときは、ブルーリポンバッジをつけているからということで、排除されたということなんですよ。で、先ほど、Fさんの尋問にもありましたように、その事件が起こるまで、事件が起こるまでっていうか、この予告を出すまでは、朝鮮学校側も、在特会のことを知らないのだということなのに、どうしてそのとき排除されたのか。

(原告代理人異議あり

(裁判長)異議は何。

(原告代理人)適切な質問とは思えない。

(裁判長)証人が一般的に、朝鮮学校がオープンだというのは、恐らく朝鮮大学を除く部分でおっしゃっているんじゃないかと思うが、そうじゃないのですか。
いや, まあ, 必ずしもそうでは。まあ, 朝鮮大学は, 確かに一番入りにくいとこだとは思いますけれども、それだけではなくて学校をやっているときに・・。

(裁判長)全体を、じゃあ、指しているとおっしゃるんなら、朝鮮大学に関しては、いろんなアクセスが制限されたのは、どうお考えですかという質問です。
そういうこともあると思いますし、何を察知して止めたのかは、私にはわかりかねるとしか言いようがないですね。やはり、何かを守ろうとして、入れたらまずいと思って入れなかったと思う。それが、本当にプルーリボンだったのか、何だったのかは、私にはよく分かりません。

◆被告本人(八木)。そのとき言われたのが、ブルーリボンをつけているから、あなたは入れませんよと言われた。

(裁判長)朝鮮大学は、何か、ちょっと、事情が、私は違うと思っているんですけど。普通の教育機関と違うとは思っている。アクセス制限があったのは普通かなあと思っているが、在特会側はね、もっと、普通に入れるもんだという前提で聞いているのか?特に、自分たちが排除されたっていう気持ちで。

◆被告本人(八木)。そうだ。まあ、今、公にされているということなので。

(原告代理人)。裁判長。そこについても動画があるので提出する。あれだと入れてくれないだろうっていう感じで言っていますから。必要だったら出す。けんか腰ですから。

◆(被告代理人)まあ、いずれにしても証人に対する質間としては、ちょっと不適切・・。

(裁判長)最終的には、理由は分かりかねますということか。
はい。

◆被告本人(八木)。あと、質問というよりは素朴な疑問で、韓国系の朝鮮学校ってあるが、そことの交流というか、北朝鮮系の朝鮮学校と韓国系の朝鮮学校とあると思うが、その両者の交流はあるのか。
どうだろう。直接学校間の交流があるのかどうかというのは聞いたことがないので、ないのかなと思うが、実は、経営サイド、理事サイドでの情報交換とか、まあ、個人的な繋がりはある。そういう飲み会の場に行ったことがあり、情報交換はやっていると思う。

◆一点忘れたことがあるので。教育内容のことについて関係する。いわゆる、主体思想との関係だ。現在、随分変わっているのだという証言だが、しかし、いわゆる、金日成金正日の、その、お言葉って言うか、マルクスって言うか、そういったことを、学校で、教育内容として教えているっていうことを、いろんな文献とかで見るが、その辺りは変わったのか。それは今でも事実としてあるのか。
私が、初等学校の教科書を見た限りでは、そういう、よくある金日成いわく、金正日いわくで出てくる、ゴシック体の、ああいうやつか。あれはない。

◆今、私の方から質問したのは、中級、高等、そういったところでは。
そちらは、実はちゃんと見ていないので分からない。あるかもしれない。

◆よく分からないということか。
はい。

◆被告本人(八木)。これ、反対尋問でも分からなかったのだが、在特会の活動っていうのが、許容し難いレイシズムだということとあるが、その基準を教えていただきたい。ちょっと質問が分かりにくくて申し訳ないが、 例えば、その、侮辱の発言だとかが、多かったとか少なかったとか、いや、 一言でもあったら、もうそれは許し難いものだと、そういう、何て言うか、基準と言うか、教えてほしい。
基準がなかなか一言で言えるか分からないが、 ひとつ言うなら、外国から来られた、こういう移民の問題とか、関心のある研究者に、こんなこと、あったのだよというふうにビデオなどを見せると、すぐに、あっ、これねっていうふうに、まあ、ヨーロッパでも、ああいうのは、姿形を変えてある。で、その、ああ、日本版だなというのはすぐに理解する。 意見書の中でも、人種主義、人種差別撤廃委員会のことを少し書いているので、もう、その場でも、ああ、これねっていうふうに、みんな理解したと。で、それは、まあ、内容まで分かっていないかもしれないけれども、その姿とか矛先とかを見れば、すぐに分かってしまうという、そういうレベルだと思う。まずは。明確にこういうことだから、何か、基準があってとかというわけじゃなくて、まあ、見た目でと。今回の件は非常に明確だ。教科書にも載せられそうな、そういう事例だと思う。

◆被告本人(八木)。明確だと思ったその理由だが、どういう言葉が問題だったとか、どういう言葉が多かったとか。
例えば、日本から出ていけとか。それから、キムチ臭いとか、まあ、いろんなのがある。ちょっと今、空で覚えてはいないので、分からないが、 そういう言葉、一連の言葉、それから、それが向けられているその対象だ。ということを含めてっていうことになる。

◆被告本人(八木)。で, 私は、それで、阪神教育闘争といったものを、まあ、ちょっとここで,本件とは関係はないが、ただ、これが非常に破壊的な側面というのがある。で、今の話でいくと、これはもう政治運動を越えているのではないかと。そう感じざるを得ないのだが、その点はどうか。
48年の運動が政治運動を越えているという話か。

◆被告本人(八木)。そうだ。
さあ、どうでしょうか、その点と、私はあんまり関係ないと思うが、正にあれは政治運動だ。ただ、これ、占領軍が非常に過敏に反応する形で、非常事態宣言にまで至って死者まで出てしまったという、まあ、そういう事件だが、その中では単に日本の情勢だけじゃなくて、朝鮮半島情勢と密接に関わって、米軍が動いたっていうのがある。で、そういう中で、本来の状況以上に、かなり、でっかいものになったというのはあると思う。

◆被告本人(八木)。これは、レイシズムっていう言葉では表せないとは思うが、やはり、政治運動を越えたと、そういう認識でいいか。
どっち側か?

◆被告本人(八木)。阪神教育闘争の方だ。
闘争側か?

◆被告本人(八木)。はい。
いや、越えてはいないと。

(裁判長)どっち側だというのは学校側?それとも弾圧側?
弾圧側。

◆被告本人(八木)学校側だ。朝鮮学校側。

(原告代理人)先ほど、明確に証言したが、 政治運動そのものですというふうに。

(裁判長)学校側が一線を越えていたからという質問か。
◆被告本人(八木)。はい。

(裁判長)だから、阪神教育闘争の時の、あのときは、まだ、朝鮮学校っていう言い方かどうか分からないが、朝鮮学校側の教育内容が余りにも過激だったから、弾圧を受けたんじゃないかということ?
◆被告本人(八木)いや、違う。 あの時は日本の文部省、まあ、実際にはGHQだが、閉鎖しなさいという命令が出てきて、それに反発した、きっかけはそうだと思うが。

(裁判長)いや、だから、質問の内容が、ちょっと分かりにくい。

◆被告本人(八木)。まあ、きっかけはそういうことで、で、そういう運動だったら確かに政治運動だとは思う。

(裁判長)政治運動かな?

◆被告本人(八本)。まあ、政治運動と、要するに、自分たちの権利を守るためのデモ行進をやるだとか。

(裁判長)ああ、それは学校側か。

◆被告本人(八木)。学校側が、はい。

(裁判長)反発がね。

◆被告本人(八木)。そうそう。それで終わるんだったらいいが、結局、その当時、神戸の知事室に入り込んでいって、で、非常に乱暴なことをしたと。あるいは、先生の意見書の方にも出ていると思うが、京都でも、やはり市長室に入ってバリケードを張ったと、そういう歴史があると思うが、さすがにそこまでやったら政治運動を越えているんじゃないかと思うが。
ああ、そうですか。私はそういうのが政治運動だと思うが。

(裁判長)それで、仮にそういうことがあって、何を聞きたいのか。

◆被告本人(八木)。ああ、それで、結局、私たちのやっていること、在特会のやっていることを、私は、一応、政治運動だと、そのつもりでやっている。

(裁判長)だから、在特会が、今回行った行動は阪神教育闘争のときの、朝鮮学校側が日本の行政にやった行動と大して変わらないじゃないかっていう?
◆被告本人(八木)。大して変わらないって、もうちょっと柔らかいが。

(裁判長)まあ、同等のものと見られるということを質問しているのか。
◆被告本人(八木)。はい。

(裁判長)やっと分かった。それで, 今の質問だとどうか。
基本的には相当違うとは思うが、それをどう言語化したらいいか、なかなか、時間が掛かりそうだ。

(裁判長)まあ、同等のものかっていう・・。
まあ、あのときは占領軍と、それから日本政府だ。それが対抗相手というか、その措置を変えてほしいという運動であり、そういう意味では、国家権力、国家機構、暴力機構というのが背景にあり、対象に対する政治連動だ。で、在特会の今回の動きというのは、そういうのとは、まず、かなり、対象が全然違っていると思う。それから、向けられている矛先が子供らだったりするというところでも相当違うというところで、かなり質的な違いがあると思う。

◆被告本人(八木)。私たちは、別に、子供を対象にしてやったわけではない。飽くまで対象は学校だ。

◆原告代理人。異議。

(裁判長)それはあなたの御主張だから。質問としてはこれで終わりということか。
◆被告本人(八木)はい。 あと、レイシズムというのが、結局、過剰な反応だと、過剰な
一般化だということをおっしゃいましたけども、結局、これって今回の朝鮮学校のオモニ会、アポジ会の方の反応ですよね、これも結局は過剰な反応ということにならないか。

(裁判長)どんな反応のことを指しているのか。
◆被告本人(八木)。つまり、在特会に対する警備だ。

(裁判長)警備?
◆被告本人(八木)。はい。

(裁判長)過剰な反応かっていう、単なる質問だと理解をしたら・・。
いや, 非常に具体的な組識、団体に、1回攻撃されているわけだから、そういう人たちから防衛をするのは、ちっとも過剰な一般化ではないと思う。


(裁判長)適切な反対尋間ではないから、制限します。



◆最後に一つ、文化的レイシズムに関する質問だ。現在、いわゆる高校無償化手続から、朝鮮学校は外されている。で、そういう動き、補助金との関係でも、そういう補助金を打ち切るということを表明した団体が幾つか続いているということは御承知だと思う。で、そのときの理由、例えば政府の理由は、朝鮮学校が、北朝鮮の体制を支えるための対日工作機関の疑いがあるということを言っているが、こういうことを理由に、別の扱いをするということについては、これも文化的レイシズムに当たるのか。
私は、そういう事例になっていると思う。その認識とは、実は、私、論文の中で、自民党から出ている、政府自民党の文言だと思うが、自民党は、野党時代、2010年にその文言を、既に、声明に出している。で、その中身が、在特会の主張と実は変わらないという問題を指摘したことがある。 つまり、校門の前で工作機関だと言った。言い方はひどいけれども薄めると、自民党と同じだと。で、そのことが、より間題を深刻にさせているという脈絡の中で、つまり、一部のレイシスト集団と言われるような人たちがやっているだけじゃなくて、もう少し構造的に排除がなされていることが、より、話としては深刻だという事例で、実は、その文言を引いたことがあって、それ、歴史を遡ると、もう1960年代くらいから、自民党の中でそういう認識というのは、ずっと報告書やら何やらで、積み重ねられてきて、その源泉には、公安調査庁とか警察の外事の調査がありというような、その中で出てきていることだと思う。だから、そういう意味で非常に何か、政府だから客観的な論評というふうには思えない内容を含んだ、そういう話だと思う。

◆そのことに関係してだが、時と場所、で、やり方、このことは、本件、ちょっと置いておきましょう。で、先生が今言われたように、中身としては、政府が言っていることと同じじゃないか。あるいは、同一の構造を持った言説ではないかという指摘か。
はい。

◆これは、一つの意見として、表現の自由として尊重する余地はないのか。
まあ、実際、もう表現していると思うが、これが、じゃあ、レイシズムかどうかって言われると、私はレイシズムだと思っているし、人種差別撤廃委員会に、この議論、この後、持っていくと思うが、明確に、これは問題だ、是正せよっていう話になると思う。

◆というのが先生の御意見か。
はい。既に法案の段階で、そういう一部の政治家が言っているだけで問題だっていう話になっていましたので、それを政府が掲げたということになると、改めて指摘されることになると思う。

◆よく分からないが、それは一つの意見ではないのか。
意見だ。意見であり、レイシズムを含む意見だというふうになる。で、それを、別に全て、あらゆる人が言ってはならないとかというふうには言わないが、そういう意見だということになる。




裁判長尋問


(裁判長)民族教育というのが、一つ、我々日本の中で住んでいるから、分かりにくいが、今、在外日本人のための、民族教育をする日本人学校っていうのは海外にあるのか。もしあったら何か教えてほしい。
そういう民族教育という、その表現を使っていたかどうか、ちょっと定かではないが日本人学校という形である。

(裁判長)あれは日本に帰ってくることを前提にして教育している私学だと思うが、何か、似たような、今回の朝鮮学校と同じような、こんなのも海外にはありますっという例が幾つか、もしあれば紹介していただければもっとこう、すとんと理解ができるのかなと思うが。
そこは、割に課題なのだが、私の課題だが、まあ、よく事例として出るのは、ムスリム学校と言われるものがある。で、他はどうか。中国になってくると、今度は少数民族の学校になってくるので、外国人学校というのとはまた違ってきたりして。また、これ、比較はできなくなってくる。なので、ちょっと、あると思いながら、まだ調べられていないと。

(裁判長)まあ、同じようなものとしては、ムスリム学校というのが、一番、キリスト教国の中のイスラム学校・・。
よく出てくるものですが、それも実は、実態はよく分からない。で、朝鮮学校ほど、実は、幼稚園から大学まで制度があるっていうこと自体、世界的には結構珍しいことだと思っています。




終了。
(次回、まとめに続く)